相棒がサンプルを抱えて京都から戻った。埃掃除を終えた新装の自宅で作戦会議。
とても小さな土地であるが、長年探し続けた裏庭の在るピンポイントの所在地だ。
改築を始めている京都の隠れ家「鹿ケ谷」は、遂に産声をあげてその姿を現した。
昨年に基礎工事を終え、コンクリートも良く乾燥して、強度も充分に確保された。
いよいよ、『土台墨付け』→ 『土台敷き及びボルト固定』と、太く頑丈な木材が
組まれ、『大引き敷設根太打ち』を終え、最新の断熱材が挟み込まれ、その上を
構造用合板が塞いで『床組』を完了。この上に、床暖房が施され、無垢の床材が
敷かれる。選んだ天然の床材が顔を見せてくれる。これで底冷えする冬の京都の
寒さと向き合って行ける。京都が動き始めた。これからは、振り落とされない様に
このスピードに付いて行きたい。そんな意気込みが久しぶりに釣人を夢中にした。
さあ、考えよう! 釣人と少年、相棒の三人はサンプルの山を前に宿題と格闘する。
焼杉の種類、色合いや強度、珪藻土配合の外壁、色合いと塗り方、室内塗壁材の
色合いと塗り方 ... 。室内用塗壁材には懐かしい「北海道」、稚内層珪藻頁岩壁材と
呪文の様な漢字が顔を並べている。最初は、『方丈記』に在る、余生を過す草庵に
強い影響を受けてスタートした。運命の流れは、探していたピンポイントの所在地に
とても小さな二階建裏庭付中古家屋を釣人に引き合わせた。住める状態ではなく、
困り果てていた釣人を救ってくれたのが「棟梁」との出会いだった。其の「棟梁」と
土俵に並び、話を進める。意気込みが、釣人を静かに夢中の世界へと曳いて行った。