蝶から鳥へ

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蝶から鳥へ

手製の虫捕り網を握って駆けた幼年時代。やがて、少年は鳥の羽根を集め始めた。
自然の中で見つけた不思議な色。ラブレター(毛鉤)へ巻き込まれる微かな記憶。

「鱗粉」と呼ばれる言葉を知ったのは、思いの外、幼年時代であった。其れは、
子供ながらに細心の注意を払っても、どうしても、すぐ指先へ剥がれ落ちてしまう。
美しかった蝶の色が、一瞬で剥がれ落ちてしまう事を知った。胸部を強く握ると
蝶は死んでしまう。虫捕り網の中で羽ばたく蝶をそのまま逃がす様になっても、
やはり野原や近くの林の中を探し続けた。ある日、少年は一枚の羽根を拾った。
其の羽根は握っても色を変えず、何時までも不思議な輝きを放っていた。少年は
大切にポケットの中に包み込んだ。まだ、ラブレター(毛鉤)とは無縁の頃だった。


 

遡上の頃

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遡上の頃

そろそろだろう。釣人と少年は、しっかりと水量を蓄えたセーヌを眺めている。
ブルターニュでラブレター(毛鉤)を流したい頃合いだが ... 。今春は適わない。

悪いなァ ... 。今年は行けない。釣人は少年へ謝った。釣人に与えられる幸運は
そんなには多くない事を知っている。今年は、京都の隠れ家「鹿ケ谷」を入手した。
幸運の残りをリノベーションに使わして貰うとしても、もう底が見えている。
今を生きる為に、重要な所から優先して行こう。それにしても、今日の流れには
何時もにない緊張感が漲っている。二人はポカンと、眼を点にしてセーヌを眺めた。
日本が誇る降海型の美しい「桜 / 五月(さつき)」鱒も其の日を待って遡上する。


 

毛鉤考

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毛鉤考

鋼の鉤に鳥の羽根を縛り付ける。其れは細い糸に結ばれ、流へと送り込まれた。
初期の毛鉤はそんな風に作られ、使われたのだろう。そして、次第に改良された。

釣人なら誰でも、釣り方に関係なく、或る日どこかで毛鉤と遭遇しているだろう。
小さな毛鉤なら虫を思っただろうか?大きな毛鉤なら、言葉では表現が難しく、
何やら不思議な妖艶さにドキドキさせられたかも知れない。もう、虫とは言えず、
それでいて命の証といったものを備えた、未だ知り得ない生物の様なものだろう。
模倣の様でも、疑似餌とはかけ離れた生物。其々の釣人が違った鉤を使う事から、
少年と釣人は何時からか?其れらをラブレター(毛鉤)と呼び合う事に合点した。
鋼の鉤は確かに野生魚の顎を捉える目的のモノであったが、動きを表す素材の
鳥羽根と美しいコントラストを生み出すモノであった。鋼の鉤と羽根は合体して
初期のラブレター(毛鉤)を完成した。幾度も書き換えられ、命を持ち始めた。
釣人は、流れの前で静かに己の箱を開くだろう。恥じらいの一巻きをそっと結ぶ。


 

ストック

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ストック


すぐ使わないものをどれだけ持っているかが豊かさとか? 明日の我が身か ... ?
「将来に備えておこう」と迄は良かったのだが、少々増えすぎてしまったかナ?

材料が、自分の一生で、今後どれ位必要になるか?釣人は逆算した。窓越しに
太巻きのストックを眺めると、若い時はちょっとした羨ましさを感じていたものだ。
ふんだんな材料に囲まれてモノ作りに専念したい願望が常に在った。最近になり、
これから一体どれ位のモノが、実際の創作に必要となるのだろうか?と頭を掻く。
「此れ、あげるヨ!」少年の箱へ寄贈する。釣人なりに、証拠隠滅を図っている。
言葉通り「適材適所」、時々により、其れが有効に生かされる居場所が在る筈だ。
年齢と共に、腹八分、腹六分が良さそうだ。道具箱や材料箱も、極力軽くしたい。
完全燃焼がカッコ良い。「宵越しのゼニは持たないヨ」と、職人を気取ってみたい。


 

画伯の家

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画伯の家

画伯の家

日曜の午後に ポッ と時間が空いた。近郊の「藤田 嗣次画伯の家」へ出かけた。
パリ近郊ヴィリエ・ル・バクル村へ車でひとっ走り。 40分程でフジタ家へ着いた。

どちらかと言えば、レオナルド・フジタと言った方が少年には ピーンと響く様だ。
日曜の午後だったが、連絡ひとつで少年が飛んで来た。相棒はお手製カステラと
コーヒーをリュックに準備済みだ。釣人は住所をカーナビにしっかり打ち込んだ。
メガネが離せなくなって来ると、地図を見ずに走れるカーナビに頭が下がる思いだ。
随分とお世話になり、気楽に走り回れる様になった。釣人には、探し物が在った。
京都に計画中の隠れ家「鹿ケ谷」の作案に、この画伯が人生の最後を過ごした
「終の住処」がきっとヒントを教えてくれる。是非、体で其れを感じ取りたかった。
車は春空いっぱいに黄色を添える菜の花畑の村道を越え、パリの南西へと走った。
三度目の訪問だった。アトリエ兼住居の隅々に残された画伯の思いに温められた。


 

街のジム

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街のジム

「灯台もと暗し」の発見! 自宅すぐ傍の広場に筋力トレーニング機が設置された。
嬉しい事に、周囲は竹林に囲まれている。勿論、使用無料で市民へ開かれている。

早速、少年と相棒へ知らせようと、釣人は道を急いで帰宅した。ちょっとした
会員制スポーツジムの様な筋力マシーンが、何時の間にか?取り付けられていた。
専門トレーナーのアドイバイスが在ったのだろう?総合筋力トレーニングが簡単に
組める様に、最新の筋力マシーンが無駄なく配置されていた。緑の空気を存分に
吸いながら、散歩途中に身軽に使えるのが何よりだ。何と言っても、使用無料!だ。
堅苦しいルールもなく、各自の責任で自由に使える。久しぶりに、始めようかナ?
空爆に使う税金より、市民への健康的なプレゼントにはパリらしい洒落気が在る。 
日本から熊本地震の震災ニュースが届いた。こんな時こそ対策と行動が希望を生む。


 

『春告鳥』

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春告鳥

春告鳥

もう散ってしまうのかい? 散り行く花びらを見送る様に若緑が拡がり始めた。
釣人と少年は、明るい春景色の中に、学び始めた 『陰翳礼讃』を探していた。

一昨日の晩、昨日と続いて珍しく雷が鳴り響いた。季節は「春雷」を迎えている。
少しづつやって来た春が、三寒四温を繰り返しながら、アッ と言う間に過ぎて
行こうとしている。ヒラヒラと散る薄紅色の花びらを見送りながら、春告鳥達は
巣作りを感じたのだろう。樹上で騒いでいた鳥達が細枝を嘴に咥えて飛んで行く。
花びらが残してくれた春の雫は、後を継ぐ若葉へと譲られた。ちじこまった命を
開こうとしている。釣人は若緑の隙間になごり雪の様に残る春に、陰翳の生を
感じた。春雨に打たれて散るも、また美しいかも知れない。少年と共に学びたい。


 

「いき」への憧憬

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「いき」への憧憬

空へ抜ける様な青色が隠れる様に配色されていた。雌鴨の矢羽根を思わせた。
上方の「粋(すい)」は、関東で「いき」として命を持つことになったらしい。

少年は釣人が時々口にする言葉「カッコ良い」を、なんとか自分流に探り出そうと
苦戦していた。「野暮」ではダメで、「伊達」がいいのかナ? 釣人からくれぐれも
「イタチ」と読むなヨ と冷やかされた漢字の意味合いもまだ定かではないのだ ... 。
最近、其れは「意気」とも書いて良さそうだ、「意気地」とも関係がありそうだ迄に
漕ぎ着いている。 が、未だしっくりと入り込めない。「男伊達」・「女伊達」は、
当分の間、少年には (おとこイタチ)と(おんなイタチ)でまかり通っている。
目下の処は暗中模索。「カッコ良い」が、少年には一番解り易い道標である様だ。
釣人は決して交わる事のない青と白の領域に目を細めて、少年の肩をそっと叩いた。


 

『 風に吹かれて 』

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『風に吹かれて』

風に吹かれて飛んで来た野鳥の羽根が一枚、二枚。蜘蛛の巣で一刻の休憩中。
風は何処から旅立ったのだろう?大陸を吹き抜け、一体何処迄行く気だろうか?

路上でふと拾い上げた野鳥の羽根で、渾身のラブレター(毛鉤)を一巻きづつ ... 。
何時かそんな釣人に至って見たいと思っている。自分の指先技術を確認する為に
一旦巻き始めると、最低 20〜 30、全く同じ型の毛鉤を巻き上げるのが常だった。
技術の確認にはなるのだが ... 、小箱に詰め込まれた、同型の「佃煮毛鉤」だった。
修練を課し、言い訳を必要としない一人前になりたかった。偶然ではなく、必然への
憧れもあった。最近、ふと、もう少し進んでみたいと覚悟の臍を括る夢が生まれた。
少年の記憶、大陸を行く「グレーハウンド」の紋章はまだ 走り続けてるだろうか?
つむじ風や Mr.タンブリン・マン伝説は、まだ君の体に熱き滾りをくれるだろうか?
ただ一つのラブレター(毛鉤)へ ... 。少年には「一期一会」の心意気と説明した。
空想はそのままラブレター(毛鉤)に現れる。一枚の羽根に生きざまを教えられた。


 

小道具整理

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小道具

同類項をまとめる。まづは、同型の箱に同種類別に整理して、重ねてみる。
殆どがいらないモノと解っているが、一箱ごとの四捨五入が何よりも難しい。

釣人は長年の集め過ぎた小道具類を前に、どうしようもない溜息をひとつ吐いた。
其々にお世話になった。盛りの時には、何が何でも必要なモノ達であったのだが、
歳月のなかに埋もれるモノが増え始めている。『太く契る』が何よりの恩返しと
なるだろうが、如何せん、荷物を減らさねば、飛び立ち準備が儘ならない現状だ。
己の体力を考え、少年の手助けを貰いながら、釣人はしぶしぶと整理整頓に入る。
合わせて自分の体重もさらに 1.5kg程落したい。軽いに越した事はないだろう。


 

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