JUGEMテーマ:日記・一般
同名の旅本二冊『京の川』。 水上勉 と河野仁昭。両氏の著書に流れを教えられる。
相棒の生まれ故郷話には、鷹ヶ峰、北山杉など ... 、山の気流が伝わる言葉が多い。
昨年同様、半日だけだが自転車を降りて山川沿いを歩いてみた。市内ではあるが、
野趣を十分味わえるハイキングが堪能出来る。古都の懐の深さに心を温められた。
そのまま飲める様な源流の清さに、水を掌に感じたく、降り下って流れに触れた。
最後の一歩で不覚にも水苔に足を滑らせてしまった。日本の苔は乾いて見えても
随分滑る事を勉強した。ゴアの山靴に救われた。日本を離れて、随分長い年月が
過ぎている事を実感した。市内生まれの相棒が、故郷話を咲かせると山気が香る
単語が頻発する。岩魚が棲む流れではなさそうだが、清流を見ると心が洗われた。
何時か少年にも同様な本をリュックに詰め、故郷の流れを遡る日が来るだろうか?
水上 勉「京の川」新潮文庫の文面から、ヒロイン静香の言葉で引かせて頂こう。
『うちは、川が好きどすねん。一日じゅう川をみててもあきがきィしません。
生まれたところは、鞍馬の下の、高野川の岸でしゃろ。そこは淋しい村どした
けど、家の下をすぐ川が流れてましたし、お母ちゃんが死んでから、もらわれ
てきたお義父さんの家が大けな桂川のみえる西の京でしたんや。ほれに、
大きゅうなってから働くようになったんが、先斗町どすやろ。裏の賀茂川みてたら、
うちは川ばっかり眺めて暮してるんや ..... とふと思うときがありますのんや』
初めての流れを横切ろうとする時、ちょっとした不安に駆られたり、それとは逆に、
川に見守られている様な錯覚を感じる時がある。釣人はそんな自分を鼓舞しながら、
少年と相棒と、川を眺めながら暮らして行きたいと一歩づつ進む人種かも知れない。
空想の夢は生ある内に適うだろうか? たとえ時間切れでも遡って行きたいと思う。
其れが「ケセラセラ」と流れを進む事ではないか? と釣人はお腹を括って考えた。