石造りの街

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石造りの街

大きな切り立った岩にへばり付く。小さな家が凌ぎながら隙間を埋めている。
外側は変わっても、パリは石を積み上げた街だ。剥ぎ取ると素材が顔を出す。

街の建物は、時の流れで外壁の飾りを変えるが、基本的には石造りで築かれて来た。
しっかりと頑丈な石壁建物の隙間には、小さな家々が、当然の様に居候を決め込み、
ピッタリ屋根をへばり付かせて同居をしているようだ。微笑ましい共存の街並みだ。
いかつい石の街は、小さな同居人と共に角を丸くしていく。狭い路地に誘われて街を
歩くと、風に流されながら、奥へ奥へと導かれる。散歩中の釣人は、そんな佇みに
川の沈み石を思った。川は逆流が渦巻く位置に、砂を堆積させる。街も角張った隅に
丸みを許すのだろう。釣人と少年は丸いカーブに誘われ、石の脇へと流されて行く。

 

紅い毛鉤

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紅い毛鉤

紅。何かと目に付きやすい色だ。少女がいつか唇になぞり、少年を紅顔させる色。
魚食系の大型魚には、必死に逃げる小魚の「鰓の躍動」を思わせるのだろうか?

「釣人の履歴書は毛鉤箱に仕舞われている。」確かに思い当たる節が残る言回しだ。
思案中にふと選び出す色の一つに、「紅色」があげられる。釣人は全体が紅い毛鉤
で釣り上げた記憶が在った。管理釣り場の池に夕陽が一本のラインを作り、映り込む
暮れ時だったと思い返す。釣人は其のライン上に、紅い毛鉤を投げた。たまたま、
たぶん機嫌が良かった管理釣り場の鱒が、其の毛鉤を元気いっぱいに咥えてくれた。
毛鉤は、どんどん変わって行く。今は、其の呼び名を「ラブレター」と言い換えた。

 

曇り 時々 ライフワーク

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『川からの手紙』

本棚から久しぶりに 田淵義雄さんの『川からの手紙』 を抜き出し、読み直した。
釣人は少年と街を歩生きながら、時々、ライフワークの竿完成を考え続けている。

師匠 J.M.DUBOS から毛鉤竹竿を学んだ。学んだと言っても、サン・ルイ島に在る
La Maison de la mouche (毛鉤の家)釣具店の奥部屋にあるアトリエで一緒の時を
数年に渡り過ごさせて貰ったと言う師事だった。竿の修理・製作を通して学んだ事
よりも、師の人間的な在り方からより大切なものを授かった思いが在る。師が思う
竿や毛鉤釣りから自分流の毛鉤釣りを探求し続けて行く事の大切さを宿題に頂いた。
独立後、竿数は多くないが、竹竿やカーボン竿の受注にも恵まれた。壁には自分用、
相棒用の竹竿も、竿自慢の一張羅(いっちょら)として掛かって在る。当時はまだ
自己流で未熟だったキャスティングも、フルラインナー達成と共に、一応卒業出来た
のではないだろうか?そして今、グラスロッド(旧型良品)へ夢が湧き始めて来た。
竹より優れたシナヤカさを持ちながら、時代の流れの中に、新材カーボンやボロンの
画期的登場で未発達のまま影へ消え去った素材。そんな忘れ去られた素朴を今こそ、
拾いあげて見たくなった。フルラインを出し切った以降、拓けてきた新しい境地か?
シルクラインとの組み合わせの面白さか?やはり、歳から来たペーソスの様なもの?
釣行後、一緒に湯に浸かり一日を思い合える気のイイ竿。性能はまァまァで十分だ。
師匠 J.M.DUBOS は目細め、肩叩いてくれるだろうか?「釣人のグラスロッド」。
竿二つ。竿名「あづき(小豆)/AZUKI」と「くろ豆(黒豆)/KUROMAME」。
仕事や探求を離れて一本づつ、毎日時間を決めて、ゆっくりと、本当に少しづつ、
思案を楽しみながら作りたい。それは子供の頃に近くの駄菓子屋にぶら下がっていた
懐かしいお菓子の様な色合いだろう。どこへでも一緒に歩けるパックロッドがいい。
昨日、文具店に小型ノートを求めに行った。表紙に「竿日誌」と記入した。今に至る
あるがままの自分を形にしよう。二つの竿作りを通し、少年と語り合って行きたい。


 森や川や木や草は、いつもあるがままにある。自然は、ただ正直なものとして
 ある。人は、自然の中に独りでいるとき、自分もまたあるがままの自分でしか
 いられなくなる。自分に正直になるのがイヤな人は、自然のなかに身をおくのが、
 嫌いなんじゃあないだろうか?独りきりの森の夜は、いつまでたってもやっぱり
 少しさびしい。でも、このさびしさは悪くない。それは、”自分は誰なのか?
 何をしにこの惑星にやってきたのか?”というような寂しさだから。
 そして不思議なことに、このさびしさは、人に勇気ということの意味を教えて
 くれる 。... (小学館文庫「川からの手紙」 /田淵義雄 より)

釣人は少年へ文面を読んだ。「いつ頃完成するのかナ?」少年が首をかしげて聞く。
釣人は真面目顔で「一年、いや二年。ひょっとすると数年後」。最近になり、やっと
気付き始めた「あるがままにある」。釣人は、ふと、子供の頃の思い出へ回帰した。
失ったさびしさを心の奥で温めてくれる竿二つ。釣人ライフワーク 時々が始まる。
春待つ曇り日の散歩道、久しぶりに勇気貰える竿に自分の夢を託して見たくなった。

 

フルラインの向こう側

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フルラインの向こう側

少年がフルラインを出した。完全なフルラインナーへもう一息。此処からが勝負だ。
キャスティング練習は「追風」「向い風」「巻き風」「無風」、皆、友達と思う事。

フルラインへと進む為、バックラインを何処まで伸ばせるか?少年は、最終テーマと
奮闘していた。頃合い良く、バックストレートに十分なラインが綺麗に伸びると、
右手首(竿手)を被せる様に締め込んだ。少し遅らせて、左手(糸手)は思い切って
背中後ろまでラインを引き絞る。フィニッシュは右手(竿手)を固定してブラさず。
さァ どうだろう?足下に溜めたラインが、スルスルと、流れる様に滑り出て行く。
「出た!」「フルライン出た!」。少年と釣人が歓声を漏らす。此処からが勝負だ。
27m のラインは全て放出したが、ランニングラインとの結び目は、まだリールから
数センチだ。釣人と少年の「フルライン」了解では、ランニングラインとの結び目が
竿先トップガイドから完全に抜け出てこそ、「フルライン」なのだった。此処からの
15cm ごとの飛距離延長がひと勝負だ。決して力技ではないのだが、多少部分的な
筋トレも必要となって来る。「あっぱれ!、あっぱれ!」釣人は、少年の肩を叩いて
祝福した。少年が使用する竿は釣人流れの「旧型良品竿」。最近の新型竿なら、もう
充分に結び目はトップガイドを通過している筈だ。釣人は少年へその事を伏せた。
「フルライン」を出す出さないに特別意味はないが、これによりキャスティング中の
動きに独自の問題点が無く、無事卒業証書と相成るからだ。もう一息、精進しよう。
釣人は少年の「完全フルラインナー」達成を待っている。キャスティング動作から
自由に解放されると、いよいよ「バンブーロッドのキャスティング」の登板となる。
それは、距離から質へのキャスティング探求の始まりを意味している様に思われた。
釣人はしばしば「バンブーロッド」を「グラスロッド」と言い換えて説明を加えた。
強く早いファーストテーパーのカーボンロッドを自在に熟す人も、柔らかくスローな
バンブーロッド( or グラスロッド)ではラインを出しにくく感じる人が多い筈だ。
ところが、柔らかくスローな「バンブーロッド」( or グラスロッド)を自在に振る
人にカーボンロッドを振らせると、何の問題もなく自由にラインを出す。どうやら、
ここら辺に探求を次の段階へ進んで行く「鍵」が隠されている様だ。確認しよう!

バンブーロッドキャスティング(フライキャスティングテクニック/ 沢田賢一郎著)
 - ラインが長くなるにつれ、左右の手を動かすストロークを少しづつ増やしていく。
 - ラインが伸びきるときの力を利用してバックキャストに入る。
 - ロッドを滑らかにゆっくり振る。ラインスピードを速くする必要はない。
 - 前後のポーズを長めにとる。左手のホールを少し遅らせて行うとよい。
 - 静かにゆっくり振っても、ラインは落下せず、きれいに伸びていく。

練習を積み、フルラインを出し切ろう!其の後にこそ、独学探求すべき楽しみが
待っている。己の技と体、竿が共鳴して来る。少年フルラインナーへ、誘いの道標。

 

少年時間

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少年時間

お気に入り懐中時計。掌に馴染み、Gパン前ポケットにすっぽり収まってくれる。
縁に恵まれて巡り合えた一品。定年退職した駅長さんからお礼に頂いた宝物だ。

時計裏面には「昭 34 xxxx 国鉄」と彫り込まれてある。長年使い込まれた肌触りが
掌に伝わってくる。退職後に楽しみとしていた趣味の絵画を始め、日展入賞までに
努力精進された亡き駅長さんからの贈り物だった。何時の間にか眼鏡のお世話になる
年齢を迎えると、丸く大きな刻面はありがたい。掌にもすっぽり落ち着いてくれる。
額に「SEIKO PRECISION」 、秒面に「SECOND SETTING」と毎日の列車時刻を
正確に刻んで来た証が在った。毎朝のネジを巻き、巻ネジを上げると、ピッタリと
秒針が秒面 60位置で止まり、秒分調整が正確に出来る母国日本が誇る旧型良品だ。
「鉄チャン」系の少年なら目を丸くするだろう。亡き駅長さんは、安全を見守り、
この時計と少年時間を過ごした。自慢の宝物。釣人は、流れの時を、今共に過ごす。

 

冬鴎

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冬鴎

春を待つ女(ひと)がいる。春を待つ鳥もいる。高緯度の北国に春が明けて来る。
節分を越え、立春も過ぎて春を待ち焦がれている。もう少しの辛抱で大地が暖まる。

女がひとり、パン切れを与えていた。「ワタシはカモメ」。釣人は旧ソビエト連邦の
女性宇宙飛行士が残した歴史的な言葉を思い浮かべた。鴎と共に空を翔んでいる。
冬将軍が其の行跡を残そうと、まだまだぶり返して来る。暴れれば暴れる程、春は
目に見えて近づいて来るものだ。もう少しの辛抱だ。寒気団の最後の吐息を待とう。
地球がまだ美しい青色に輝く限り、春は訪れる。鳥達は、寒さに堪えて低空を飛ぶ。
女は空を見上げながら、何かを語り掛けている様だ。釣人と少年は白い冬を思った。

 

パリ凍る

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パリ凍る

昨日ブログ送信中に、少年が頬染めてやって来た。街が凍り付いているそうだ。
防寒の格好から中途半端な寒さではなさそうだ。早速、着込んで一緒に街へ出た。

昨日「暖冬だが体感温度寒し」ブログ送信直後から、「パリ凍る」寒さが始まった。
朝気温 -2℃、まだ大丈夫と油断していたら、澄み切った寒気がパリの街全体を既に
覆いつくしていた。少年はインナー・ダウンを着込み、外をウインドストッパーで
防寒した完全装備だ。「青空で気持ちいい冬だよ!」少年は既に頬を染めて白息だ。
早速、釣人も着込んで今年一番の寒さを味わいに少年と街へ出た。澄み切った街中に
冬影が小気味好い程に、長くはっきりとコントラストを描いている。頬を射す様な
気持ち良い冬の寒さが伝わって来た。冬将軍が名誉挽回を試みて暴れている様子だ。
今冬初めて見る、パリの路面氷結だった。早朝から「塩」が巻かれて、街は薄化粧。
春前の季節が動き出した。釣人と少年も、外気を吸いながら今春最新作の準備開始。

 

春まだ遠し

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春まだ遠し

年末、年始、新春と暖冬で通して来たが、春到来を前に肌寒い天候が続いている。
朝コーヒー時の予報では現在気温 -2℃。体感温度は特に低く -7℃を示していた。

今冬を振り返ると、全体的には、この数年続いている暖冬の延長を思わす暖かさだ。
ここ数年の冬と違う点は雨が少なかった事だろう。その代りに春を迎える頃になり、
気温が下がっている様に感じる。実際にはそれ程低くないが、体感温度はなぜか?
冬の冷たさを感じさせられる。雨量は少ないが、降ると、霙(みぞれ)を伴うなど
空気に湿気を含んでいる様子だ。冷たいサウナにいる様で実際より寒く感じられる。
澄み切った青空やスッキリした冬の寒さもたまに現れるが、気持ち良く春を待つ日に
なかなか恵まれない。待ち人遅しといった感じだ。襟を立て春の到来を待っている。

 

絡まった形

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絡まった形

絡まった形を見ると、突然いつも通りにはいかなくなる差し迫った臨場感が伝わる。
少し捻じれて停められていただけで、その形は、前後の判断さえ難しいものとなる。

水中を行く毛鉤の状態は通常の判断より複雑だ。流れに揉まれながら流下したり、
速い流れに耐えながらバランスや定位を保ったり、川底から水面へ泳ぎ昇ったり、
水深くへ潜り込んで行ったりと、変化する流れの中で生と死の営みを其の姿勢や
様態で表している。少年は生物(いきもの)を考える時、どうしてもまず第一に、
頭や体、眼や口の位置、手足の上下左右や方向性を考える。毛鉤のポイントには
頭部「眼の位置」を空想して巻き上げる事が多い。其れが、成虫や幼虫であれ、
小魚や水に生きる生物であれ、平泳ぎやイカ泳ぎ、エビの様な動き方であっても
頭部の位置付けは重要な判断だ。「魚食性の鳥は魚を食べる時、嘴で咥えた魚を
木枝に叩き、咥え直して、其の頭方向から、確実に呑み込んで行く」釣人の説明を
思い出して少年は考えていた。流速の中では、魚は流れ去る迄の短い時間内に、
其れが捕食すべき餌(生物)か?塵なのか?を、判断しなければならないだろう。
その際に重要になる点が生物(いきもの)の証。やはり、其の者が持つ平均的な
各部位の方向性や位置付けと言えるだろうか?水中のルールを少年流に空想した。

少年はまだ自然界の「絡まった形」を知らなかった。脱皮の途中で動けなくなり
不運にも息絶えた幼虫の様、溺れて流される歪んだ姿、弱い者から捕食されていく
自然界の弱肉強食の現実。「絡まった形」には社会が忘れかけている差し迫った
臨場感が漂っているものだ。何時か日を改めて、絡まってしまった糸を解きながら、
少し難しいラブレター(毛鉤)の存在を伝えよう。今は、もう少し時間を置きたい。

 

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