JUGEMテーマ:日記・一般
街は春に色づいている。紅葉から落葉を見慣れた網膜には新鮮で刺激的だ。
ブルーダンで始まった早春の毛鉤は、やがて薄っすらとクリーム色を帯びて来る。
季節により食欲そそられる色が変わる様に、毛鉤の色も、川底や流れの温度、
陽射しや気温を読んで微妙に変化が生じる。枯色にコントラストした秋色は
春の水気をたっぷり含んだ鮮やかな色へと移行して来る。そんな色には甘味に
加えて酸っぱ味が含まれている。毛鉤釣りは味覚や嗅覚で魚を誘う釣法ではなく、
無味無臭の素材、色や質感、シルエットなどで魚と対峙する趣をルールとした。
餌釣りと異なる定めを持つ事で、何かを放棄し、新たなモノを手に入れようと
試みた釣法のひとつだ。ハンディキャップを覚悟で、虫と変らぬ軽さを武器に、
先達はラブレター(毛鉤)を巻き始めた。生き生きした季節のみずみずしさを
色や質感で表現する愉しみが生まれる。釣人と少年も、腕を競って巻き比べる。
やがて毛鉤は、まだ見ぬ大物を想い、虫から未確認の生き物へと色づき始める。