虫のように

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翔ぶが如く

市場にカワイイ奴が停まっていた。「虫のように」は、毛鉤だけでもなさそうだ。
釣人は「蝉」、少年は「カナブン」を空想した。昆虫ならば 4枚羽根だが ... 。

少年には夏蝉の記憶が薄い。漠然と夏に聞いた蝉声は覚えているものの、その姿は
余り定かではなかった。フランスでは殆ど蝉を目にしない。デザインとしては各所に
登場する蝉も、そのものは気温や緯度、土質などで生息の確認は出来ない。北海道
では、真夏の毛鉤として、「山蝉」毛鉤も登場すると聞いたが、未だ体験に及ばず、
少年への説明にやや力を欠いた。蝉には単眼(通常の目と目の間にある星状の 3点)
と複眼(いわゆる目)が在る。単眼は照度計の様に、光の明暗などを感知する器官
らしい。少年の忘れかけた日本の蝉へ、即席知識を点滴しておく。人は様々な要素を
自然から享受している。亡き師曰く、「釣人は虫の様(さま)で在れ。小さき事は、
長所なる事」と励まされた言葉を思い出す。ルノー社製小型車は、空を飛びそうだ。

 

ラテンの夏

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ラテンの夏

暑い、寒いと言いながら今年も夏を越えて行く。紅い夕陽は、「ラテンの夏」。
地中海の島々やバカンス地と同様に、パリの街にも夏の夕陽が降りて行く。

毎朝の稲妻雷雨で起こされ、日中は夏休みらしい暑さが続き、夏仕事が進む。
夏の夕陽に想う事。日本を出発し、アメリカ滞在を経て、欧州へと渡って来た
過ぎし日を、釣人は西日に照らされて思い出す。いつの間に、少年の歳月の
三倍程を海外で生きている。そんな成り行きを、自分で選んで来たのだろう。
海へ降りようと心に決め、出遅れて来春を待つ渓魚の様だったのかも知れない。
そして其の一年一年に夏を越えて来た。現場に出た。仕事箱を抱えてヒヤ汗で
駆け回った若き日、竿を握りしめて家へ走った夏。いつか相棒との縁に結ばれ、
少年と出会えた日。長かった様で短い歳月に、二人の師匠と父が去って行った。
オレンジ色の夕陽が野火の様に石造りの街に残照を映す。今と同じ様な夕陽を、
釣人は毎年様々に見送って来た。最近では真夏をすっかりパリで過ごしている。
一人暮らす少年にも、屋根裏の部屋窓から今日の夕陽が見えているだろうか?
釣人は灼熱紅い夕陽を、「ラテンの夏」と呼ぶ。熱き血潮に心を染めて貰った。

 

夕立のあと

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夕立のあと

気温が上昇し、夕立が降った。降り足りない雨を早朝の雷が落とした。
今朝は過ごし易い夏休みが再び顔を見せた。一日休んだ夏仕事を再開する。

隠れ家「Dragon」のささやかな窓植木棚、木製テラス柵が、直射に晒され、
乾燥が随分と進んでいた。夏仕事にニス補充塗りを予定し、先日一度塗りを
済ませた。乾燥した木柵は、ニスを待っていた様に吸い込む。これで随分と
寿命を延ばしてくれることだろう。残った重ね補充塗りは、昨日の夕立にて
一時休憩。良く乾燥させてから作業再開の手取りとなった。今朝は早朝から
稲妻で目覚めされた。降り残した雨を雷が落としていた。朝コーヒー後には
快晴の夏休みが再開した。街も、久しぶりに乾ききった喉を潤した事だろう。
釣人は空を覗き、作業具を整理。夏休み宿題、隠れ家「Dragon」修復作業
に再び取り組む。乾ききった夏渓では、久しぶりの夕立がエサを運んで来る。
水温上昇、酸素が薄くなった流れの中で、鱒も上流を見詰めている事だろう。

 

着色

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着色

釣人と少年の意見を交換。「毛鉤素材の着色について」空想の世界が広がる。
着色染料の品質向上はめざましい。天然色か?人工色か? or 食性か?挑発か?

着色について、釣人と少年の間には既に合点の確認事項が在った。毛鉤に関する
「着色」とは素材への着色であり、毛鉤への着色ではない。二人の約束事だった。
毛鉤は塗り絵ではないので、完成後の毛鉤へ着色を施す事は一応外して考える。
巻止める作業の末に完成される毛鉤像は、やはり素材から触発される積み重ねが
生み出すシルエットと結びたい。完成毛鉤へのエアースプレーなどによる着色や、
あるいは油性ペンなどによる追加的な着色は、基礎作業の段階で一応度外視して
考えから外す。さて、意見交換へ戻ろう。天然色か?人工色か?例えば「黒」。
天然毛鉤素材の鳥の羽根はどうだろう?黒に見えても、なかなか真っ黒な羽根は
見当たらない。天然色の黒は案外、暗く濃い灰色である事が多いものだ。その点、
人工色で染められた黒色羽根はいかにもカラス濡れ羽色を思わせる真っ黒である。
この二つ異なる黒色素材、天然色 or 人工色、どちらの黒色が毛鉤として有効性
を発揮し得るのだろう?どっさりと大量に巻き込んだ場合、若干パラりと少量を
巻止めた場合。流れの水質や透明度は?毛鉤自身の大きさは?釣人と少年はふと
互いの結論を見出している事に気付いた。「やっぱり、そうだよね」二人の合点。
答えは流れの魚達が既に握っている。どちらが better かは釣行時のお楽しみだ。


「to be quiet (トゥー・ビー・クワイエット)」 から

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to be quiet

僕等の「スニーカー」が生まれ、固い靴を脱いだ若者は音無しで歩き始めた。
『玉石をふんで歩くあの子の足どりは、音がせなんだ .. 』 足はこびから始めよう。

静かになった街に普段聞きとれなかった音が響き始めた。『魚を全く驚かさない
というわけにはいかない。しかし、驚かさなければ驚かさないだけ、より多くの
魚が釣れる 』シェリダン・アンダーソン、田淵 義雄著/フライフィッシング教書。
釣人と少年、二人の共有教本から引かせて頂いた。「鱒釣心得:その 1」である。
街が静まる折角の夏休み期間中、ここ一番「to be quiet → serenity of mind 」、
動きの「静かさ」から、心の「平静」へと。各人精進して、カッコ良く近づきたい。
まずは、釣人がお手本。「釣り人」から「釣人」へと思い切って脱皮して見せよう。
釣りとは、その探究を実生活に反映させる人に理解できる、と少年へ伝えたい。
釣人は己を静めてはじめて、平静へ近づく資格を得る。釣人と少年の合点である。
少年は石畳を河原の玉石を踏む様に歩き始めた。釣人は少年の意気に学んだ。


ストリーム

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ストリーム

stream:(水、潮、空気などの)流れ。小川や流れの意味を示す古英語。
其の中を行くモノは、ストリーマーと呼ばれる。やはり流線型が良いようだ。

風が凪ぐと気温が上がり始めた。夏らしい日射しが続いている。湿度は低く、
日蔭を歩くと汗は収まり、時折の風が心地良くTシャツを抜けて行く。夏だ。
仕事合間にふと時間が生まれ、久しぶりに溜まり場のカフェで、友の詩人と
お茶をした。聞き上手な詩人にはいつも話しぱなしで、迷惑を掛けてしまう。
毎回分野の違う世界を解り易く紐解いて貰い、力を貰っている。時の流れと
暦について、詩人の感性を頂く。釣人の知らない本居宣長の世界を解り易く
聞かせてくれた。釣人は来る途中に停車していた怪力号の姿を思い出した。
メーターを忘れ、気流に乗る。膚と心で感じとる体感スピード。釣人は流れに
自分を晒し、詩人は文章に流れを見出すのか?流れの中で均衡を保つには、
やはり流線型が優れているだろう。真紅のストリーマーが出動を待っていた。

 

少年 「研ぎ比(くら)べ」

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研ぎ比(くら)べ

「研ぐ、磨く」は、まずやって見る事。頭で考えていても刃は立たない。
注)刃物の扱いは必ず経験者の許可を受けてから始める事が固い約束事だ。

釣人は木工ノミと愛用携帯ナイフの刃を拾う作業から開始した。横に座る
少年は、釣人の手順を見ながら台所包丁を担当。相棒の期待に応えるべく、
少年の初体験。刃物研ぎにあたり、釣人は「切れない刃物ほどよく指を切る」
と重要な注意。研ぎ方を乞う必要は特別ないだろう。研ぐ前に、虫メガネで
じっくりと正確に、刃の研ぎ具合を観察する事。砥石はバケツ水に暫く漬けて
おくと良いだろう。後は焦らず丁寧に、以前のまま、刃を拾ってやるだけだ。
平ノミなど薄く内側に凹在る刃面は、平でも多少経験が必要となる。刃部を
50回研ぎ、凹が隠れている刃面を力入れずに丁寧に 1回摩ってやる具合だ。
研ぎ進めるべき面と薄く整える面(研ぎ進めてはいけない面)に注意する事。
(初心者は平刃の台所包丁から経験すると会得し易い)。知識を必要とする
ものではなく、刃面を良く観察さえすれば、初心者にこそ向いた根気仕事だ。
但し、刃物の恐ろしさを教えてあげる事は、経験者の義務だ。初心者は必ず、
経験者の許可を受けて刃物と接する事が固い約束事となる。後は、せっせと
手を動かして見る事がなによりの研ぎ会得方法だ。少年手腕の見せ所だろう。
「心配せずに思う様に研いでごらん」釣人は横に座った少年を見守っている。


パリ緑燦燦

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緑燦燦

街人は太陽を追いかけ、南へ下って行った。パリは静まり、夏の緑を深める。
釣人と少年は、夏休み計画表を作成。今年の夏仕事はどこまで進むだろう?

7月 14日のパリ祭(フランス革命記念日)も終わり、今週末日曜は第100回目を
迎えたツール・ド・フランス(フランス競技自転車ロードレース)2013 最終日が、
7/21 パリのシャンゼリーゼ通りを駆け抜ける。この辺りから、夏バカンス移動も
ピークへ突入。パリっ子もすっかり南下を終え、パリの街並みは空っぽになる。
パリ残る組、釣人と少年はまず夏休み計画表に取り掛かった。釣人は溜まった
仕事を整え、少年は普段出来なかった面倒な工作物と取り組む。肩を叩き合い、
「夏休み中だから、ゆっくりやろうネ」と二人で弱音を確認。合点の心意気だ。
幸い今の処、湿度も低く過ごし易い。緑の風に吹かれながら匍匐(ほふく)前進。 


少年 「見惚れ」

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見惚れ

人影減って来たパリ街角に少年は妖しい自転車を見惚(みと)れていた。
軽い夏風に翼を伸ばすと、街で過ごす釣人と少年にも夏休みが訪れた。

黒にピンクは、ちょっとショッキングな対比を見せてくれる。少年の目が点だ。
釣人にも思い浮かぶ疑わしい節があった。小学校の低学年時代だっただろう?
放課後、級友が何かの機会で集まった。たぶん、病気入院休みの級友を見舞い
に行こうという相談だったと思うが、皆がなぜ学校外で集まったか?そして、
なぜ級友の或る女の子の家へ集合したか?は今となってはまったく定かでない。
とにかく、或る日の放課後、低学年の子供らが先生のまったく知らないままに、
或る女の子の家へ集まった。皆がいつもと違い、大人っぽく見えた記憶がある。
とりわけ、其の家の女の子にはびっくりした。見慣れないハイカラな洋服姿で
扉を開けてくれた。黒のタートル・セーターにピンクのタイト・スカートだった。
何時もは細いと思っていた級友の女の子は、遥かに大人っぽく、いや確かに、
当時の釣人少年には、すっかり大人の女性に見えた。たった其れだけの記憶だ。
シベリアの川でサーモン釣り三昧を終えて帰った友人にアタリ毛鉤を聞いた処、
彼がつまみ出し見せてくれた毛鉤は、「ピンク・ブラック」ウーリーバガー如きの
毛鉤だった。「こんなモノに ... 」、釣人ははにかみ、ふと少年の後姿を覗いた。

 

『泥の河』

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泥の河

セーヌはパリ街中をサン・ルイ島とシテ島を挟む様に東から西へ流れる。
石壁で覆われた流れには余り動かぬ停泊船が何時もの様に碇っている。

パリは慣れると右岸・左岸を行ったり来たりする小さな街だ。季節により
流れの様子は多少変わるが、街の河岸は石壁で覆われ、傾斜少ない底を
休まずゆるやかに流れている。街中の石造り川は、泥の匂いを感じさない。
此のお堀の様な流れの中を野生鮭が遡って行くニュースに、パリっ子は
驚かされたものだ。宮本 輝原作、小栗 康平第一回監督作品『泥の河』を
夏休みの勉強に見直した。釣人は欄干から自分の住む街の流れを見直す。
白いランニング、ステテコの夏姿をもう余り見る事は出来ない。時は流れ、
昔の映像に郷愁の様なやさしさと哀しさを思い出した。釣人は流れと共に
成長して行くものだが、時として、未完成の時代を懐かしむ事も多々在る。
尾を曳きながらしか動けぬものには、必死に流れを追う時があるから ... 。
観終わった後に、本棚の一冊を読み直した。時代やジャンルの流れの中で、
幸田 文著「流れる」巻末の著者のことばに、心温まるやすらぎを頂いた。

『小さいときから川を見ていた。水は流れたがって、とっとと走り下りて
いた。そのくせとまりたがりもして、たゆたい、渋り、淀(よど)み、でも
また流れていた。川には橋がかかっていた。人は橋が川の流れの上にかけ
られていることなど頓着(とんじゃく)なく、平気で渡って行った。私も
そうした。橋はなんでもない。なんでもないけれど橋へかかると、なぜか
心はいつも一瞬ためらって、川上川下、この岸あの岸と眺(なが)めるのだ。
水は流れるし、橋は通じるし、「流れる」とは題したけれど、橋手前のあの、
ふとためらう心には強く惹(ひ)かれている。 幸田 文 / 著者のことば 』

移り変わって行く自分を見詰めるものへ、添えてくれた彼女のことばだろう。
少年ともう一度セーヌを渡り直して見たい。同じスピードで、歩きたくなった。

 

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