虫の冬宿

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虫の冬宿 

公園を歩くと目にする小さな「隠れ家」。「Hotel de charme」との看板付き。
どうやら野生蜂用の冬場の宿らしい。ミシェラン社にぜひ星を頂きたい佇まいだ。

管理者の温情か?生態系学者のアドバイスか?フランスの公園にはよく写真の様な
小ぶりの祠小屋を目にする。玄関正面に掲げられた看板には「快適ホテル」などと、
なかなかの宣伝ぶりがユーモアと情熱を感じさせてくれて微笑ましい。内部の構造は
決して飾り物ではなく、専門学者の知識が組み込まれ、冬場を凌げる実用スタイルで
あり、子供達の自然科学教育にも役立っている。釣人と少年は立ち止り、じっくりと
泊まり心地を検証した。自然界で強者が弱者と接する時、果たして互いを譲り合い、
助け合う事は何処まで実際に可能なのだろうか?二人は冬空に幼鱒の鼓動を思った。



男鉤 ( otokobari )

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男鉤 

作詞を始めた阿久悠氏は『女は一言多く、男は一言少なく』をテーマにしたらしい。
毛鉤では「女鉤は一巻多く、男鉤は一巻少なく」と言い変える事が出来るだろう。

巻き止める量が多い場合は、雌鳥の柔らかい羽根がしなやかな動きで泳いでくれる。
切れ味の在る動きを望む場合は、少量でも張りを保つ雄鳥の羽根に期待を掛けよう。
どんな素性の毛鉤に仕上げよう?どんな泳ぎっぷりを仕込んでおこうか?水中での
動きは素材に頼る部分が大きい。「適材適所」と言う事。釣人は、当たり前の言葉で
少年に説明した。毛鉤は作業台で巻かれ、流れの中で使われるもの。卓上の飾り物
ではない。「大切な事は水中での動き方、流れでの泳ぎぷりだヨ」。今度は一言多く
解説を加えた。少年は、釣人に誘われて、深く静かに流れの底へ潜り込んで行った。


羽根物語

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羽根物語 

空を飛ぶ鳥の羽根で流れの魚を釣り上げる。釣人は毛鉤を巻き始めた。
溜めたフライ・ボックスを全部ひっくりかえしても、答えは見つからない。

ルーブル美術館から抜け出た様な色彩の組み合わせ、邦楽の音色の様に響き在る色、
張りと輝きを秘めた素材、天使の悪戯の様なしなやかさ .. 釣人は何処までも我儘を
毛鉤に巻き込もうとしているのか?熱情にかられて彷徨いながら、何時か気付くと、
釣人は巻き始めた頃の懐かしい毛鉤へ回帰していたりするものだ。少年は机の本棚に
目をやった。昔読んだ本が並んでいる。其れは童話「羽根物語」なのかも知れない。


セーヌ増水

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セーヌ増水 

2013年鱒釣ライセンス購入済ませる。近づく春、迎える準備を開始する。
長く続く冬雨の影響か?暖冬の結果か?セーヌは例年にない増水を見せている。

鱒釣年券の購入を済ます。少々堪える金額だが釣人免除証の様なものと納得する。
少年、相棒と釣人、相棒の女性用券が半額になってくれるのは天の助けだ。その他に
三人には鮭釣年券(遡上魚用)が必要になるが、そちらは毎年ブルターニュ現地での
購入に決めている。三人とも釣り密猟者にはなりたくない。覚悟の上の痛い出費だ。
セーヌ上流は特殊な村規則により、オンブル(グレーリング)解禁の 5月を待たねば
鱒釣りが許されないが、フランス一般的鱒川、鮭川は三月中日を待ち、解禁となり、
川は釣人へ開かれる。今冬は例年にない冬雨続き、また暖冬だった。解禁の春川は
相当な増水ぶりが今から囁かれている。遡上魚が溜まる目当てのプール(遡上時の
休憩場所)が随分例年と変わって来る筈だ。遡上魚は例年より早いスピードで上流の
目的地へ遡って行くだろう。少年と釣人はセーヌの増水を眺めながら鮭川を思った。


『春〜よ 来い!』

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『春〜よ 来い!』 

「ソロソロ、爪研ぎ直しておかねば ... 」。釣人と少年は、腹式呼吸で準備運動。
巻外し乾燥させておいた冬越しのシルクライン。まず、釣具と体を冬眠から覚ます。

二人は竿を磨き直し、其々の毛鉤箱を覗き込んだ。隙間なく膨らんでいた筈だが、
随分歯欠け状態、冬風が吹いている。新鮮で艶在る美味しそうな毛鉤を補充する。
釣人は、少し硬くなった手首や筋肉をワイン瓶回しの運動で回復を図った。窓外の
風は冷たいが、春の匂いが届き始めている。少年は、肩を回し、西空へ背伸びした。
冬雨が長かった。春川は、近年稀な大増水になるだろう。鮭は、流れを遡って行く。


冬の隠れ家

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冬の隠れ家 

冬の隠れ家

スポーツ釣具展示会場からの帰り道、公園内に冬のオブジェが置かれていた。
寒も明け、渡り鳥は北の湖を恋しがる。小動物達はまだ隠れ家の中だろう。

「野生に優しいオブジェだね!」釣人は少年と共に眺めた。寒の明けも過ぎたが、
予報では明日頃から夜間に冷え込みが復活するらしい。野生の小動物達には、
まだ冬の隠れ家が必要な処だろう。渡り鳥の群れは頭を上げ始めた。風の温もり
に気付き始めた鳥から翼準備運動を開始する。此方欧州の自然と関わる人達に
共通して感心させられる点が在る。大陸を移動する動物達の長い移動距離を把握
している事だ。また、高緯度の冬の寒さを良く心得ている。「野生蜂の冬家」と
記された可愛らしい「虫の冬小屋」もフランス各所公園内で良く見受けられる。
高緯度の大陸で共に春を待つ仲間同士の連帯。二人も、冬風に春を待っている。


上品

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上品 

上品

上品

上品とは常に物静かな内に、キラリと妖しさを秘めて輝く者へ贈る言葉だ。
誕生に至る迄の孤立無援の歳月は、幾年もの霜月に磨かれた品格を湛えている。

時代の流れには確かに流行と言った追い風が吹くものだ。何かのきっかけを契機に
竹の子の如く芽を出して来る者達が在る。新しい風に、水をさす積りは決してない。
個人的な好みで、物静かに在る者を贔屓する傾向は認めざるを得ないだのが ... 。
「たとえ少量になっても、品質の良い物」心掛けていても巡り会える機会は少ない。
「日頃の行いと釣り神様のご機嫌次第?」釣人は秘密ポケットの中身を確認した。
今回のサロンでの驚きの一つは、目新しいパッケージ・ロゴのシルクラインが溢れて
いた事だ。専門業者に伺うと、洋装パケージではあったが、中国製シルクラインの
到来らしい。生産国別に品質評価する訳では決してなく、費やされた研究時間と
フィールドでの検証、労力と材料が値段相応ならば良品は誕生すると信じている。
突然登場した速さに驚かされたのが正直な気持ちだ。釣人は師匠からの流れが在り、
フランス産純性シルクライン(写真 JP.Thebault )を愛用する。少年は其の艶を
掌で摩り、丸瞳で羨望した。友人JP.Thebault は、#4ラインをそっと 1箱少年に
手渡してウィンクした。また借りが増えてしまった。少年の懐は、上品に膨らんだ。
シルクラインの膚は、使用月日と共に、栗色へ変化しながら其のしなやかさを増す。
末永く付き合うコツは頻繁に使い熟してやる事。リールの肥やしに巻溜めて置く事は
寿命を早める結果となる。出来るだけ定期的に流れに晒し、使用後十分乾燥させる。
此れを繰り返しながら、必要に応じて、極少量の専用油を指で補充してやれば良い。
補油時のコツは、ラインをしっかり引っ張り引りながら、丁寧に少量を塗り込む事。
普段の手入れ時にラインに油を感じる場合は、敢えて補油せずに、指で磨くだけで
油を付け過ぎない事も大切なテクニックだ。大切な事は乾燥と必要量だけの補油。
長い歳月を共に過ごし、しなやかさを増して来た栗色シルクラインは、少年も知る
釣人の愛用品。低番手 #4 愛竿スコット・グラスファイバーと相性は御墨付きだ。
特に高番手の竿を振り込んだ後に此の組み合わせは至福の時間を味合わせてくれる。
「ありがとう。大切に育てます」少年と釣人は白髪頭 JP.Thebault に手を振った。
Ps.(JP.Thebault シルクラインは師匠特選店:東京浅草つるや釣具店で日本在庫)


釣人達

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釣人達 

少年は展示スタンド全てを廻り終えると、ホッ と一つ肩で深呼吸をした。
さて、じっくり味わいながらコースを廻り直す。釣人が少年を案内する番だ。

釣法や時代を越え、こよなく至福の時を刻んだ先達の夢のアイデアを拝見する。
二人の探究課題は毛鉤釣りに絞り込まれているが、ダイナミックな発想法を学ぶ
意味では、古のルアーやジグなどの「夢の作戦」、形状の変化に至った経緯など、
其の移り変わりを実際に目にする事は大切だ。釣人は少年へ、少年は釣人から。
美しく広大な流れを目の前に、釣人は何を思うだろうか?遥か遠き流れの中心に
己の思いを存分に泳がせてみたい。飛ばす必要上、錘型の魚に針が仕込まれた。
浮きを目印にした釣法から随分の飛躍となったことだろう。やがて、遠投を掌中に
修めた釣人は、其の美しい流れの中を思いのまま泳ぐ己の昂ぶりを見出して行く。
針を仕込んだ魚型の物体を、より釣人の手練のまま、操作性富む形状が生まれる。
釣人の思いはプロペラ状胸鰭となり、其の瞳を伴い、現実の釣具へと整理された。
錘を巻き込まない毛鉤釣りでは、ラインの種類や投法、流れの読みなどで毛鉤を
思いの流れへと送り込む。より生き生きとした動きを何より尊重すると、其の流れ
に合わせた巻き方や、重さを最小限に押さえる事で、自由闊達に泳ぎを修得した
毛鉤が有効性を発揮する。釣人達は其の毛鉤へ不必要と思われる程の思い込み
や趣向を注入して来た。釣果を得る事は全ての釣りの本題で在るが、其の中心を
成す目的に各釣法の違いが生じた。「各種釣法を熟視する事は重要な事だよ」。
少年はテンカラ竿より遥かに短いフライ竿とリールの存在に意味を見つけ始めた。



スポーツ釣具展示会 2013 Paris にて

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 スポーツ釣具展示会 2013 Paris 

 スポーツ釣具展示会 2013 Paris

釣人は勇む少年に引っ張られながら、展示会場狭しとスタンドを動き廻った。
少年の新鮮で熱い視線が、釣人を遥か昔の懐かしい時間へと誘い出した。

少年の足は速い。川歩きでは少年を引き離す釣人もスタンド廻りでは遅れを取る。
「そんなに急がなくてもスタンドは逃げないよ!」釣人には経験済みの歩き方が、
少年にはまだ慣れていない様だ。日本古来の毛鉤釣法の「テンカラ」竿を発見して、
少年の息はまだ収まっていない様子だ。話題の波を引き起こした Dハンド竿やら
新しいアンダーハンド投法が紹介されて数々の目新しい釣用具が市場に溢れた。
少々数が増えすぎた釣具を後に、欧州の釣人達の間に、東洋の端から届いた、
日本古来の毛鉤釣法が最近静かに語り始められている。廻り回って、釣人達は
其の極限のシンプルさに驚異の技を見い出されている。青い目のピレネー山脈や
ニュージーランドを釣り廻る釣りキチのガイドが「此れはスポーツフィッシング!」
と言い切った言葉が少年の胸に残っていた。用具にではなく、自分自身の躰内に
技術や知識を蓄積として取り込んだ釣人になりたい。少年は、まだ見ぬものに
鼓動を弾ませている。釣人は少年に掌を曳かれながら、懐かしい釣具の夢を見た。
温かさが伝わるものを少年へ届けたい。釣人は今朝読んだ朝日新聞天声人語の
「ごんぎつね」(新美南吉作 かすや昌宏絵)記事が心に留まっている事に気付いた。
毛鉤釣り独学探究の中、昔話は何処まで其の温かさを新しい年代に伝え得るか?


Tenkara ( Salon de la Peche 2013 )

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Tenkara 

Salon de la Peche 2013 (スポーツ釣具展示会 2013 Paris )が開催された。
釣人と少年は新しい発見を求めて、2/1,2/2 両日共にバンセンヌ森の会場へ ... 。

釣人は毎年感じる事だが、近年特に釣具の色、艶、形が想像を超えて変わって来た。
業者の作戦上の事だろうが、商業性の色合いが徐々に強まり、釣りに興味のない人
までも遂々興味そそられて購入してしまう様なきらびやかな商品群が積まれている。
長らく生活と釣りを両立すべく独学探究を続けて来たお蔭で突拍子もない衝動買いに
陥る失敗は随分少なくなった。釣人は既に家の釣具在庫スペースを心に刻んでいる。
少年は微かにポケット膨らませ、頬は紅顔、目は点で新しい発見へ心ときめき状態。
少年は最近 Paris 釣人間で囁かれ始めた 「Tenkara」竿をいち速くも発見した。
リールが無く、スルスルとアンテナの様に伸び出て来るテンカラ竿のシンプル構造や
軽さはどうだろう!一番軽い竿を振らせて貰った。日本古来の毛鉤竿は、少年の心に
新しい明かりを灯した。シンプルな用具、技術を体に取り込みたくなる一竿だった。


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