冬の或る日、ふと湧いた読書時間に有り付いた。阿久 悠氏の歌謡曲史に目を通す。
彼はどんな息づかいを聴き取りながら、時代の夢を心に残して行ったのだろうか?
白紙スケジュールの数日が気持ちをのんびりとさせてくれた。予想外「冬の大雪」も
時には意気な時間をプレゼントしてくれる。棚を探り、本読み直す時間を授かった。
釣人と少年は昔巻き上げた毛鉤に目を通した。有島 武朗著『生まれいずる悩み』 の
読書後に感じさせられた慟哭とは全く別質の「存在への息づかい」が心地良く二人に
語り掛けてくれた。少年にまだ少し難しさも残ったが、男唄と女唄に、男鉤と女鉤の
存在を空想する機会を得られた。『一つ一つは、その時代時代の吐息のようなもので
あったりするものが、吐息としてかき消されることなく、次の吐息への準備運動の
ような役割を果たして繋がるのである 。/あとがき』。二人は心意気を胸に刻んだ。