「太陽が清々しい朝だった ... 」。頬赤らめた青年は、少しはにかんで日記に書き込んだ。
魚名を聞くと、青年は、「シュベンヌ!」と魚を前に掲げて見せ、静かに川の流れへ戻した。
パリの街中、ノートルダム大聖堂裏側のセーヌ川右岸で青年が良型を釣り上げた。セーヌを対岸へ渡っていると、遥か川岸に熱気を感じた。釣人と少年が駆け寄ると、ルアー竿を傍に立掛けた青年が良型の魚を抑えていた。青年の赤ら顔が、彼の至福を熱気を伴って伝えて来る。少年は目を丸くして、魚一点を見詰めている。自分の家から徒歩 5分、セーヌの川が生きている。ルアーでも毛鉤でも、釣人にとって魚が釣れた日は何よりも嬉しい吉日なのだ。