パリ 金葉

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パリ 金葉

『 金色の 小さき鳥の 形して 銀杏散るなり 夕日の丘に 』  与謝野晶子
風に厳しさが忍び込む。石造りの街、時折の陽射に樹々の黄葉が輝いてくれる。

ユネスコ世界遺産指定に守られ、セーヌ河岸の風景は永遠に残される。学生時代に歩いた川辺の風景が何時迄も生きてくれる事に感謝している。変わらぬ風景を季節が折々の色に染め上げて行く。雲の形が変わる度に、陽光が一瞬の変化を誕生させる。そんな一刻の中、Carrousel 橋下流に在った少年お気に入りの「右岸の大樹」は、樹齢を全うし、切倒された。座り心地良かった太い根だけは切株で残っているが、少年は別れを悟った様だ。想い出や美しい風景は心底にきっと残しておこう。釣人は少年の肩をそっと叩き、左岸へ橋を渡った。


冬の鼓動

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冬の鼓動 

「木枯らし一番」が冬を告げた。紅葉が山頂から下り始めると、人里に初霜が降りた。
生まれたての冬の鼓動が響く。もうすぐ冬将軍が隊列を組み、高緯度を横切って来る。

臆病なリスは秋の実を充分溜め込んだろうか?冬眠の動物達、しっかりと食溜めしたかい?雪に埋もれる稀少な食糧に頼る者には、厳しい冬が訪れる。釣人も夏仕事の報酬を寒さを凌ぐ暖房電気費として流用する。やがて霜は霜柱へと変わり、まだ幼かった初冬も脅威の極寒期へ成長する。全てを凍て尽くす冬将軍が到来して、北海道弁云う処の、「シバレル」季節を迎えるのだ。少年に確認する。「冬支度は何時も早目に、春支度は遅目にだよ!」。高緯度の冬は、晩秋を待たず産声をあげ、春迄の季節を存分に主張しながら渡って行く。


冬支度

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冬支度

釣人の冬支度は、高緯度の寒さを乗り切る備えと来春への準備補充だ。
野生動物は、冬の食糧備蓄、冬眠の皮下脂肪増蓄が春へ生き残る道となる。

新天地を求めた「海を泳ぐイノシシ」、山の実り不足か?「人里へ下りる親子熊」。厳しい冬を前に野生動物達が辿り着いた決断だったのだろうか?ニュースで見る人里へ下った動物の行動や姿は痛々しく映った。地球の産物を拝借出来るのは人間だけの特権なのだろうか?「親熊が子熊を守って一匹で闘っていたよ」少年の言葉が心に残った。「さあ、僕等も冬支度に入ろう。もうすぐ、高緯度のパリに冬がやって来る」釣人が月を眺めながら少年に言った。「共に在りたいね」。まずは、寒さを凌ぐ隠れ家「Dragon」の暖房器具点検から始めてみよう。


秋陽

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秋陽 

『月日は百代の過客にして、行きかう年もまた旅人なり』 松尾芭蕉
2010年・パリは7月初旬に一刻の猛暑を辿り、冷夏と呼ばれながら秋を迎えた。

今朝、ブルターニュの釣友からメールが届いた。秋鮭釣行が適わず、いよいよの冬備え後、恒例の一時帰国との連絡へ返信であった。鮭川ですれ違う、夢を語り合える釣友からだ。「 ... Currently there is much salmons in the britanny rivers.My doctor took 23, and some fisherman about 40.The spring season is more and more bad, the automn season more and more good. ... 」。最近は春よりも秋が良いと伝えて来た。鮭禁漁前の秋川に来いと誘いの様でもあった。釣人と少年は、文面を復読し、遡上の旅人をパリで見送る事にした。今年はスタート時に遅れを取ってしまった。冬場の奮闘で、来春迄に追い着こうと修復中だ。


ブルーダンの秘密

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ブルーダンの秘密 

色名:ダン。『ダン(dun)は、灰褐色、焦げ茶色などに当たるが色の範囲は広い』。
「ブルーダン」は、毛鉤を使う釣人達の中で、特別に繊細な色合いとして存在する。

「Blue Dun」。毛鉤釣りを始める前は全く所縁のない色であった。やがて、「ダン」は和色名「御召茶(omeshi-cha)」と呼ばれる色である事、御召とは、婦人和服に好まれて使われたところからの名である事など、毛鉤の探求過程で学んだ事だった。釣人は少年に話続けた。「ダンは和色名/御召茶、英語/Dun、仏語/Gris Fonce、伊語/Bruno Grigiastro、スペイン語/Pardo、独語/Gelbgrau、中国語/焦茶灰色(jiaochahuise)、 ... など呼ばれる」。将来、世界を釣り歩く事になったら材料調達や釣友との談義にでも役立ててくれ。釣人仲間では、このダン(dun)に、「Blue」 や 「Light、Dark 」などの修飾語を付け加えて語られる事が多い。土壌の色に存在を主張し、空の色に透け、川水の色にも近い。虫の羽色をも思わせる色だ。「蒼い馬」と同様、ご婦人方だけでなく、毛鉤では秘密を多く含んだ語り継がれる色である。


秋燃ゆ

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秋燃ゆ 

秋は野に燃える炎色が美しい。朝の湿気や忍び寄る寒さを吹き飛ばしてくれる。
「野火色」。釣人は名付けた色を自竿に巻上げると、「Nobi 色」と命名した。

竿の巻糸には其々の思い入れが潜んでいる。新素材のカーボンやボロンであれ、クラシックなグラスや伝統的な竹竿であれ、素材の色や質感が変わったとしても、同色の糸で巻上げられる竿が多い事から、その思いが窺える。少女が初めて買う口紅の色に迷う様に、少年は未だ自分の色を見出してはいない。釣人の「野火色」に、帰国時の飛行機窓から見た朝日を想うのだった。その色の縁には、三巻の「鳶色」が巻かれていた。釣人はそれを「お茶目な鳶色」と惚けている。何時か少年も必ず「心燃やす色」に出会うと釣人は確信しているのだ。


畑のダリア

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畑のダリア 

ダリアは幼年時代の記憶に残る花だ。自分より背丈が高く、庭の畑に逞しく咲いていた。
その「塊茎」は父の手で土中に植えられ、秋に色艶やかな花を実らせた驚きが残っている。

特別な思い入れはない筈だが、秋のダリアに遂見入ってしまう。それも、畑に咲くダリアの花に限られる。近頃その傾向は歳と共に強まって来た。釣人には思い出を遡る一瞬がある。何やら微かに見える思いが在った。奇怪な形をしたダリアの「塊茎」、土まみれの父の手、作業後に丁寧に洗われた「鍬」など、鮮明に浮かんで来た。当時幼かった釣人には、それら全てが随分大きなものに映った。母に言わすと、「釘 1本打った事がない父」らしいのだが、それ故に、鮮明に焼き付いているのかも知れない。中米原産の非耐寒性でオランダ経由の渡来だそうだ。釣人は少年を前に、不器用な指で随分ハイカラな西洋式毛鉤を巻いている。


野生シクラメンの群生

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野生シクラメンの群生 

秋の草むらに薄紅色の小花が咲いていた。「かほり」が林の中から漂って来る。
『 季節が頬をそめて 過ぎてゆきました〜 』 野生シクラメンが群生していた。

釣人は青色の小花が好きだった。それは、一人遊びの幼年時代、過ごした草むらで何時も目にした花だったからだろう。他の原色花は苦手だが、畑に咲くダリアは何故か苦手意識を刺激されない。これも、やはり、少年時代に見慣れた花だったからと思われる。そんな訳で、釣人がシクラメンの花を知ったのは、「小椋佳さんのヒット曲」後となる。この「愛に捧げた歌」のお蔭で、この花には香りが付いたそうだ。「かほり」と書かれた美しさに惹き付けられた。三十数年前の日本出発頃、流行った一曲だ。野生種の生命が、季節の中に染まっていた。


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