「朝食に戻ろう!」川から上がろうとすると、蜘蛛の巣に朝露が連なっていた。
昨日は晴天だった。三人は初めて、夜明けから流れを歩いて来た事に気付いた。
蜘蛛の巣は科学者が張り巡らしたアンテナの様に、芸術的ですらあった。「きれいだナァ!」少年は逆光の輝きを宝石の様に見入った。昼には露も消え、悪人な目をキラキラ輝かせる蜘蛛の虫取り網に豹変する。蜘蛛は長靴を履いた三人組より遥かにスマートに獲物を手に入れるだろう。きっと秋の朝方は寝坊を決め込み、自分が手掛けた傑作を寝床から鑑賞しているに違いない。陸へ上がると相棒と少年の足が急に早くなった。お腹も空いて来た。釣着を脱ぎ、「まずは絞りたてのオレンジジュースで目を覚まそう!」少年が釣人の真似をした。湿った体を乾かしに釣宿の暖かい台所へ向かう。朝食の湯気が三人を心良く迎えてくれた。