釣り小屋

JUGEMテーマ:日記・一般

釣り小屋 

「釣り小屋」は川縁に在るだけで心和む。何時か釣人の傘となってくれるものだ。
少年は一目散に川へ駆けた。あの朝見つけた「その小屋」を、 K君に見せるのだ。

来客と連れ立ち、取って置きの釣り宿を訪れた。その館は、以前、少年の毛鉤釣りデビューにも一役買ってくれた「隠れ館」だった。少々贅沢であったが、広い敷地内には河川も流れ、記念すべき祝杯には持って来いの余裕を湛えている。釣人は、「少年の朝」を思い出した。何時もになく、一番に起きる。朝食前に庭の川見に行った少年が、息弾ませて帰って来た。川縁に小さな納屋を発見したそうだ。「小文字で la maison de la pecher(釣り小屋)て書いてあった!」。それは少年のデビューを飾るに相応しい新発見だった。その日、少年の初鱒が釣れた。釣人と少年はK君のデビューを約束した。K君の夏休み、第 1ページ目に、鱒は存分に跳ねてくれるだろうか?その夜、釣人は、「ありがとう!」と祝杯をしみじみ味わった。K君 7才、乾杯が許される迄、後 13年。「釣り小屋」には、頑張って貰わなければならない。


睡蓮の池

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睡蓮の池 

モネ「睡蓮」の連作は、彼が愛したこの庭から生まれた。緑影を映す水面に、紅色が美しい。
釣人は幼年期を植物園の虫取りで過ごした。やがて、虫取り網で池の中をかき回し始めた。

幼い頃、父が勤めていた官舎が盛岡の植物園の中にあった。幼稚園から帰ると虫取り網を持ち、もっぱら一人で虫取りに励んでいた。野原に繋がれたヤギに追われて強烈な頭突きを食らったり、鬼ヤンマを追い、バラセンに足を取られて星が出る程目を回したり、様々な事を其処で教わった。経験はいまだに身に焼き付いている。まだ川と接する機会もなく、池が何よりの「水中の世界」だった。水面を逆さ泳ぎで動くマツモムシが不思議で、虫取り網を池に突っ込んでかき回した。中を覗くとメダカの様な小魚も入っていた。最初の魚との出会いだったと思い出す。ミズカマキリ、タガメ、ゲンゴロウ。初めての生物との遭遇が面白く、虫取り網で水中をかき回した。遂にドボンと池底にはまり、自力で這い出し服を乾かして家に帰った。随分と叱られたのもこの頃の思い出だ。幼いなりに、血止め草なども教わり、血が出るケガも自分流にこなして遊んでいた。池中の蓮茎に付いたヌルみや小魚の感触にも馴染んだ。歳を重ね、蓮池と接した。紅色が水面の緑影にコントラストで美しく映った。歳と共に視線が高くなった。膝を曲げ、こっそり池中を覗き込むと、懐かしい「水中の世界」が広がっていた。


夏休みの雲

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夏休みの雲 

猛暑が熱風と共に東へ去ると、高緯度のパリに気持ち良い例年の夏休みがやって来た。
水色の空が夏雲を東へ運んで行く。雲はひまわり畑や干し草の山を眺め、川上へ向かう。

日本から来客があり、夏休みの地方へと出向いた。今回で 2度目の訪仏、7才になる少年、 K君フライフィッシング初体験となる予定だ。釣人と少年は、「釣れる毛鉤」に知恵を絞った。釣着は釣人愛用のスペイジャケットの袖捲くりで何とかなるだろう。これは、少年のデビュー時に既に実験済みだ。長靴は釣り場の友人ヴィクトールに子供用長靴を拝借しよう。帽子は K君の自前でいいだろう。K君も驚く、「リバーキーパー」宜しくの釣人に仕上がった。バッチリと決まっているよ!少年と釣人・K君チームは幸運を祈った。渇水で静まった流れは K君のデビューに祝福の 1匹を授けてくれた。夏休みの雲がゆっくりと流れて行く。来客が帰国して釣人と少年は散歩道を歩いた。夏バカンスで静まるパリの街にも同じ青空が広がっていた。


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