『 ブルゴーニュ地方、ディジョンから北東約 40kmの地点の標高 446m のラングル大地の 一角にセーヌ河の源泉があります。特に景勝地という訳でもなく鬱蒼とした木々の覆うこの地に、さらさらとひとすじの地下水が湧き出ています 』 / (柿本 節子さんの紹介文より)
『溢れ出る源泉に手を浸す時、何かが体にみなぎるような気分になってくるのも気のせいでしょうか?』彼女の紹介文に導かれて、パリから東南約 300km の「セーヌの源」へとやって来た。このセーヌ河の源泉は1864年よりパリ市の所有となっており、当時つくられた人工の洞窟と、余りにも装飾的すぎる『セーヌのニンフ(水の精)』の彫刻とがこの地の神秘性とかなりアンバランスに思えます。彼女の紹介ぶりは面白い程正確に描写を続けて行く。現場に辿り着いた三人は、彼女の観察ぶりに驚かされた。そして、まだヨチヨチ歩きのセーヌの流れが初めてくぐる、『ロバの背中』と呼ばれる可愛らしく、小さな石橋を釣人と相棒と少年は愛でた。パリ市から派遣されてセーヌの源泉の管理者としてこの地に赴きた Paul LAMARCHE ( 1902 - 2003 )によって造られたセーヌ第一番目の橋だ。彼は 101歳で亡くなるまでこの地を愛し、熱意をもって保存に力をこめたそうだ。夫が造った人の歩幅程のこの小さな最初の石橋を、 LAMARCHE夫人は愛情をこめて『ロバの背中』と呼び通したそうだ。三人の目の前を、セーヌがちょろちょろと流れている。釣人は心に届いた春風に「ありがとう」と呟いた。