JUGEMテーマ:日記・一般
OMBRE の解禁日まで竿を持てない釣人の前に、野生鱒が悠々とその美しい姿を現す。
流れに定位する野生児を見つけると、釣人は反射的に胸ポケットの毛鉤箱に手を添えた。
今日は川見だから(OMBRE の解禁日まで待たねばならないので ... )と、川辺を歩きながら魚を探す。竿を車に残すと三人はまったくの丸腰で上流へと向かった。少年は口笛を吹き、相棒はバードコールを鳴らしながら、久しぶりに透き通る水音を楽しんだ。偏向メガネをかけた釣人が二人に合図を送った。「良型の野生鱒が流れに付いている」。モードは一転して、釣人三人組に急変する。半年振りに見る野生鱒の流れに付く美しい動きだ。反射的に毛鉤箱に手を添えたが、暫くその動きを見詰めていると、昂ぶりは穏やかになった。釣人は少年の肩をそっと叩き、少年は相棒に目配せした。会話は必要なかった。「野生鱒が美しい!」。三人は同じ事を感じている様だ。清流に付く魚を見る度に、釣人はいつも思う事があった。「毛鉤をもう少し薄巻きにしよう。重さのない自由な毛鉤。毛鉤の中に、流れを通したい!」。