蛍光色

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蛍光色

蛍光色は良く目立つので、今迄の赤色に変り、日常的に目にする機会が増えて来た。
発色の良い特性やその効果が、目的に合わせて色分けされ、巧く利用されている。

釣具の歴史では、昔から一般の浮きや目印に既に使われて来た蛍光色だが、毛鉤釣りには「見慣れない色」として余り使われていない。スタイル全体や用具の様式が、かなり高いレベルで長い歴史と共に完成されて来た経緯があり、発想時に習慣的な制約が働いているのかも知れない。正統を学び、それを実感するに至るにも、かなりの努力や探求心が必要となる。時代を経て来た様式は、既にテスト済みの要素が殆どで、新しい発見や効果にはそう簡単に恵まれない。散歩道の道すがら、先生に引率される子供達と出くわした。旨く色分けされた蛍光色だった。「小さくても目だつんだネ」少年が釣人に言った。「小さなポイントだからこそ、思いの外、それ自体を目立たせるのかも知れない!」釣人は少年に頷いた。「もっと小さな、極小蛍光色ポイント」にすると使えるかも知れない。蛍光点が竜の様に動き始めた。



少年の特等席

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少年の特等席 

初老のフライマンが極小毛鉤を巻く。魔法の眼鏡の向こう側には、彼の小川が流れている。
自分が釣って来た一匹一匹の鱒を想う様に、老人はゆっくりと毛鉤を巻き上げて行った。

少年は呼び止められた様に、コーナーにある作業机へ歩いて行った。少し地味目の極小の毛鉤を巻いている初老のフライマンが居た。広く空いている作業机のまん前で、少年は制作を見詰める。その毛鉤にはどこか懐かしい初春の小川の薫りがあった。意識された誇張はなく、それは本当に飛んでいそうな小さな生き物を感じさせた。少年はそんな呼吸を目前で感じ取り、その毛鉤の誕生を、老人の小川を眺めている。老人の正面で見詰める少年の姿に、それは恰も、彼の膝上に乗り、同じ魔法の眼鏡越しに共に二人で巻き上げる姿を思わせた。「コロラドに住んでいるんだよ」老人が少年に答えた。釣人は二人を、そっと小川へと残した。


創作毛鉤

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創作毛鉤 

釣具展示会の奥では毛鉤の制作実演が大勢のデモストレーターにより行われていた。
実演はアトリエの作業とは違い、会場での経験とそれなりの見せ技が必要だ。

手にとって実際に触れる有名メーカーの最新釣具と毛鉤の制作実演は会場の「華」となる。カタログやインターネットで見たあの三ツ星の釣具達が、実物で目の前に現われ、その本体を輝かせている。恐る恐る触り、掌で確かめられる。毛鉤の制作デモストレーション机にも、大勢の人輪が詰まっている。手際良く仕上がりへと進む制作過程に、「ウゥ 〜」と唸り声の様な感嘆の溜息が漏れる。各デモストレーターは、さすがに正確なリズムで、準備も整い、手際の良さが見事だ。時折見せる隠し技の度に、少年は目を丸くして何度も首を伸ばした。想像を超える遥かに短い時間で毛鉤は巻上がった。ニッコリと笑うとデモストレーターは席を外した。光の中に、「毛鉤」が残された。カッコイイ人は、退き際までが美しいものだ。少年は爪先迄背伸びをして後姿に拍手を送った。会場の実演でこのレベルを軽く巻きこなす人が、自宅作業机で渾身の作品鉤を巻くとどんな毛鉤が生まれるか?少年を支える腕が震えた。


釣針の骨格

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釣針の骨格 

様々な釣針が結ばれる。魚は、餌を捕食する様に、又は、攻撃する様にそれに齧りつく。
掛かりのより良い釣針が考案され、同時に、それを旨くカモフラージュする方法が生まれた。

「ウワァ!釣針のレントゲン写真みたいだね!」少年は釣針の構造に驚いた。「プロペラやらバーベキュー串みたいなものが付いてるよ!」。忍者小道具の様な釣針の組み合わせだ。「まったくだね!串の様な部分には釣餌の蝦やら小魚を突き通して固定するんだ。まっすぐに生きた姿勢を保つ為にも必要なんだよ。プロペラは流れの中を餌がゆっくりと引かれながらターンする為に発案されたんだよ」釣人が構造分解して説明した。「餌釣りの実績は、毛鉤釣りにも形式を変えながら引き継がれる。ウェディントン・スタイルやチューブ・フライの誕生にも少なからず影響を与えた事と思われる」釣人が説明を続けた。分野の違う釣りに興味を示さない人がいるが、全ての釣りは大きな輪の中に包括されている。陸に棲む人間が、水中を自由に泳ぎ回る魚を掛けようとして、やっと、糸と釣針を使う方法に辿り着いたのだから ...。「毛鉤釣り以外の新旧他の釣法や、特に、時代を遡ったアンティック釣具は、それらの誕生を想う時、既成品からの脱却を触発される」釣人の説明を聞きながら、釣針の骨格と構造を、再度見詰めた。「これ等の骨格から何処まで自由になれるか?」、少年は課題と正対した。


夢の作戦

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夢の作戦 

糸先に期待の星を結びつける。ルアーであれ毛鉤であれ、細い糸に大きな夢が結ばれる。
アンティックの釣具には正直に夢の形が表現されているものが多い。ストレートな釣具達だ。

髭を生やした釣人も、バッジを付けた釣人も、ネクタイ締めた釣人も ... 、釣人なら皆其々に夢の作戦を抱いて釣糸を垂れている。どんな釣り方でも、糸先に結ばれているモノにはその釣人の作戦ぶりが顔を覗かせるので面白い。作戦の天衣無縫ぶりは、まだ幼年の釣キチ君に至っては、雄大な発想エネルギーに満ち溢れている。例えば、それはこんな調子だった。ネパールを旅行中、山奥の湖で釣りに興じる少年達と遭遇した。手振り身振りの会話で聞き出すと、その大きさ 1m にも及ぶ大魚を狙っているそうだ。彼等の釣具たるやザリガニ釣りでも危なっかしい貧弱さだ。「それで、その魚を釣るのかい?」釣人の質問に少年達は白い歯を出して大声で笑い出した。しかし、その笑い声は実証済みの確固たる自信に満ちていた。秘密の作戦があるナ!釣人は直感した。大きな空ペットボトルが太紐で皆の竿下に結んである。これを浮き?に使うらしい。魚が食い付いたら、力強く合わせて、ファイトせずに竿ごと水面に仕掛けを投げ出すのだそうだ。魚は逃げるが、後からゴムボートでこの空ペットボトルを目印に、魚を追い掛け回し、仕留めるのだそうだ。夢の作戦には、教科書は不要の様だ。


SALON DE LA PECHE 2010

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SALON DE LA PECHE  2010 

12, 13 et 14 FEVRIER 2010 : PARIS PORTE VERSAILLES  10:00 〜 19:00

春近し。三月半ばの鱒川解禁(川開き)に先駆け、 2010年度釣具展示会がパリ市内にある展示会場で週末に開催された。少年が早朝からやって来た。釣人も朝のコーヒーを立ち飲みで干すと、二人は相棒に「行って来ます」と礼儀正しく挨拶して、階段を駆け降りた。「いざ!釣具サロンヘ Let's go !!」。少年のポケットが何時もより多少膨らんでいる。釣人も昨晩からの準備万端、何とか冬仕事の成果で若干温かめだ。二人はさすがに今日だけは散歩を諦め、地下鉄に飛び乗った。会場は新旧様々な釣具やアンティック・タックルで溢れている。其々の釣人が自分好みのコーナーへ足早に進んで行く。其の後、ゆっくりと会場全体を何周も探索するのだ。少年はキラキラする新発見に目を丸くし、釣人は巻人知らずの「ツワモノ」から時の流れを生き続ける命の凄みを感じ取った。プロット段階の丸秘竿を内緒で振らして貰えた。情熱を内に秘めた釣具は、キラリとした針先を底知れぬ温かさが包み込んでいる。


豊年の瑞(しるし)

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豊年の瑞(しるし)

『 新(あらた)しき 年の初めに 豊の年 しるしとならし 雪の降れるは / 万葉集 』 

「雪が多く降るのは豊年の前兆」と聞く。果たして例年になく良く降る今春の雪は、「在恵」の兆しだろうか?「今年は、ちょっと違う感じだね。天候もそうだが、冬仕事にも追われている」釣人はすっかり指紋が擦り切れた指先を少年に見せて言った。三十数年パリに住んで来たが、これ程多く雪が降る冬は記憶に無かった。この冬、二人は何度となく、釣人の散歩道に積もる薄雪の上に己の足跡を残した。釣人は時々、冬山の動物達の様にそんな足跡を振り返っていた。少年もジッパーを顔迄引き上げて歩いた。雪は冬山を寒さから守り、腐葉土はたっぷりと雪水を蓄え、ゆっくり谷川へ送って行く。今春孵化する稚魚は、新鮮な酸素を含む冷水で呼吸を始め、雪解け水を覚える。元気良く育ってくれる。雪は、豊年の瑞(しるし)だ。


馬上のおまわりさん


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馬上のおまわりさん 

ブルーの制服を身に纏った騎馬警察の隊列が行く。機能性と古風さに調和が感じられる。
よく手入れされた輝く毛並み、馬蹄の響きが早朝の街にこだまして通り過ぎて行った。

隠れ家「Dragon」への通い路、「カッ 、カッ 」との馬蹄の響きに振り向くと、騎馬警察の隊列が進んで来た。普段良く目にする訳ではなく、不定期にコースを変えた見回りか、訓練を兼ねた行進と思われた。「機能性を備えた新しい制服と従来の伝統を旨く調和させて引き継いでいるね」釣人が少年に言った。一見古風ではあるが、騎馬警察隊は馬上ならではの高さを生かして、人混みの警備や、垣根ある高級住宅地区の治安などに現役で大活躍だそうだ。「毛並みが ピカッ ピカッ 光っているね!」少年は行き届いた手入れに感心した。節減時代、ちょっとした余裕に励まされる時もある。カメラに収めると、おまわりさんがニッコリと頷いた。


リールの大きさ

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リールの大きさ 

ショーケースの飾り台に惹かれる感触があった。この丸みに大きさ、フライ・リールを想った。
フライ・リールは竿に装着して、ラインとバッキングライン、釣人の誠を巻き貯める釣用具だ。

釣人は有り余る数のフライ・リールを持っていた。毛鉤釣りを始めた頃、そして、今に至る迄。ドキドキするどうしようもない誘惑や込み上げて来る衝動に駈られた結果だ。その数が大きな木箱に山積み 2杯分ともなれば、釣人なりに反省はしているつもりだ。その猛反省の結果、最近、新顔は殆ど増えていない。正直な処を告白すると、最近製造が進む超近代メカニック搭載の便利な新型リールがどうも手に馴染まず、旧型良品の不便なリールに心地良さを感じてしまうせいだろう。「不便」と言う言葉を使ってしまったが、愛すべきリールの名誉回復の為に書き加えなければならない。「便利過ぎは、面白くはないんだよ」釣人が少年に話した。「シンプルであればある程いいんだ。魚が掛かった後、最も真剣になる時間を、フライ・リールと一心同体になって、自分自身の掌で共にパニックを乗り越えて魚と正対したい。この部分だけは、近代メカニックに攫(さら)われたくはない」。「リールの大きさはどの位がいいの?」少年は釣人に尋ねた。「自分の懐中に抱きしめて、温められる位の大きさかナ」 ?!?。「いや、元い、足りない部分がなく、余分な所もない大きさだよ」。どうやら釣人は、少年自身の巡り合せの中で、その時の竿に装着すべき最良の相棒と出逢って欲しいと願っている様である。


セピア色の朝日

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セピア色の朝日 

冬仕事の追い込み。早朝斜光時からセーヌを左岸へ渡り、隠れ家「Dragon」へ通う。
明け切れぬ冬空がセピア色に染まっていた。高緯度の街に、春はまだ少し遠い様だ。

「銅レフ(反射板)の様な光だなァ 」釣人はセーヌを左岸へと渡りながら、不思議な色の朝日を眺めた。高緯度の冬の色なのだろうか?スピナー(金属製擬似餌ルアー)に回転銅板が付いたものがあるが、こんな光の日にはピッタシなのかも知れない。柔らかく暗い斜光を感じながら、釣人はふとそんな事を考えて冬の朝日を見つめた。ルアーを使う釣りは若い時分に経験したが、やがてムーチング(餌を使ったフカセ釣り)を経て、現在探求中の毛鉤釣りへと辿り着いた。自然光と水中でのマテリアルの反射や発色は、どんな分野の釣りでもやはり気になる処だ。冬場の釣りから少し隔てた時期や、山川から離れた都会暮らしであっても、太陽や水辺の反射、空を行く小鳥の鳴き声からでも釣りの探求を続ける事は可能な筈だ。「自分は釣人として成長を続けているだろうか?」釣人はアンニュイな冬の朝日へ自問した。


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