夏のバカンスへ人々が出発すると街は随分と静かになった。休日が最盛期を迎える。
音や動きの静まったパリに夏陽が射すと久しぶりにしっかりとした街の骨格が現われる。
パリ祭が終わり、ツール・ド・フランス自転車レースもシャンゼリゼに到着した。夏もいよいよ最盛期を迎える。涼しい日が続いているので、夏恒例となったパリ・プラージも今年は幾分静かなスタートで開幕した。いつのまにか人混みが苦手となって来た釣人は、静かになった夏休みの散歩道がささやかな楽しみになっている。例えば、茂っていた深緑が葉を落とす秋頃に梢の間から久しぶりに顔を現すパリの街。電話もせず在宅に期待して訪問した友人の眠そうな顔。人影や音が静まると現われる素肌の街。そんな新鮮な出会いが好きだ。思いもよらず出くわすと、釣人と少年は素顔の川と接している様な爽やかさや驚きを味わうのだった。「釣人が去った後の川もきっと静かに流れているんだろうね」釣人は少年に語った。キャンプ場も最盛期を迎えているだろう。夏の河童達が余り多く出没せず、カヌーの往き来も少ない静かな夏川はあるだろうか?渇水に耐えながら少し大人っぽく流れる川の様子を空想する。夏の陽射しが静まった街に影を添える。釣人と少年はそんな街に大人の女性を感じながら歩いた。一流のモデルが服を脱ぎ捨てる瞬間の様に、街もその骨格を夏にさらす時がある。