JUGEMテーマ:日記・一般
春一番の風に飛ばされて来たのだろう。一番乗りの妖精がひょっこりと散歩道に現われた。
植物と虫の両方に溶け込める春服を着て、温かい南南西の風の薫りを運んで来てくれた。
「皆、穴から出ておいで。春はすぐ其処迄来ているよ!」一番乗りの妖精が休憩しながら聞かせてくれそうだ。冷たい北風は南南西の風に押されて過ぎ去ろうとしている。春は確かに近くまで来ている。「花びらの様な服だけど、手足の細さが虫ぽいね」少年は春の妖精を観察した。「手足に緩く巻かれた素材に生き物を感じられる。素材は固く巻かない方がいい場合もあるんだよ」早速二人は勉強を始めた。「顔は余り見えない方がもっと生き物に感じるけど ...。毛鉤ならそう巻く。」釣人の意見に少年も頷いた。毛鉤の場合は生き物の表情を質感や動きで表現する事が大切になって来る。省略出来る部分を除き去り、生き物を感じさせる不可欠な部分に最大限に感情と技術を導入する。植物と虫の間を自由に飛び交う事が出来る要素は一体何処から来るのだろうか?二人は妖精から春の様子を聞きながら、彼女が身に纏った不思議な服を見つめた。妖精の服には毛鉤に使える重要なヒントがきっと隠されている。どうやって植物に隠れ、どんな動きで飛ぶのだろう?少年は彼女の動きを空想した。