発想や習慣の違いで着眼点も東西南北、世界中で地域に即したデザインが産まれて来る。
保守的であっても革新的であっても、時代に残り、地域に根付く物はやはり「良品」だろう。
歩く習慣を身に付けると、時間の束縛が無い限り、小さなパリは何処へでも歩いて移動出来る広さだ。春が近ずき、冬仕事の期限に追われ始めると、時間倹約の為に地下鉄やバスを利用する機会が増えて来る。バスの切符は使い始めて 90分間は、番号の違うバス利用に限り、乗換え扱いとされて何度でも使える。旨く使うと 1枚の切符で使い勝手が良いが、初めての場所への移動は路線に詳しくない限り、習慣的に地下鉄を使ってしまう。バス専用道路の充実で移動は早くなり、景色が見えるバスの人気は最近上昇中だ。地下鉄は新型デザインへのチェンジで乗り心地の改良を図っている。パリの工業デザインは機能性の最重視と言う発想だけではなく、やはりヒューマンな楽しみをどこの国よりも盛り込んでいる。例えば、不況で経済性が語られるご時勢に、最新デザインの地下鉄車両にはゆったりとしたビジネスクラス並みの座席がパラパラと車内に設置されている。一見ゆとりの空間デザインと思われたが、皆が席を立つ混雑時は案外こういったデザインの方が乗車スペースを稼げるのかも知れないと思われた。すいている時の乗り心地は旧車両の比較ではなく、長所を十二分に発揮している。「虻蜂(あぶはち)取らず」に陥る失敗を思い切って避けている。発想の違いは気付かない箇所にも存在する。扉上部には日本でも良く見る電車の現在位置を知らせる進行表示ランプがある。「一見同じ様に見えるが、日本のシステムと大きな考え方の違いがあるんだ」釣人が少年に語った。「ランプが点っているのが今から進む駅名なんだよ」釣人が説明した。「日本のシステムは過ぎて来た駅(コース)がランプで示される」。「自分の目的の駅を見定める時、フランスではランプに注意して見つければいいんだネ!」少年はあっ 解ったヨと頷いた。情報灯を通って来た道筋の確認に使うのか?自分の行く目的地に使うのか?この考え方の違いは案外大きい。昨日(23日)、フランスは 18歳になった成人全員に新聞を1年間無料で配達する事を発表した。新聞社が購読料を引き受け、政府が配達料を負担する。活字メディアへの支援と若者の社会意識向上を兼ねた不況対策の一環だ。政府の援助は無料配達や業界への税制優遇、政府広告増加なども含み、3年間で総額6億ユーロ(約700億円)相当の予算で行われる。大統領は記者会見で、景気対策と同時に、若者の社会意識を育てる「将来への投資」で、『新聞を読む習慣は、若い時につけるべきものだ』と落ち着いて語った。釣人は不況の時こそ、目先の事に迷わされず、先を見つめて行く政策に大いに賛成した。釣人は自分流の釣り方の探求に冬の時間を費やす事を少年に勧めた。