主役助演の賞

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主役助演の賞

贈る花があるそうだ。主役を輝かせる使命に魅入られた脇に咲く花へ監督から手渡される。
蘭の花でもなく、ユリの花束でもない。アザミ色をした京紫の小ぶりな花がきっと美しい。

パリの屋根裏部屋。改装に使用されたやや安っぽい新建床材や脇木に目をつぶると骨組みのしっかりとした太い梁や先代から譲られた机の質感が見えてくる。無造作に粗く塗られた漆喰の二色のコントラストが苦手な新建材と本来の木肌を持つ木材の魅力を旨く中和してくれている。そんな屋根裏部屋の机の上に一鉢の花が添えられていた。「全てがいい!」。
釣人は久しぶりに少年と話を弾ませた。「体が質感や色の組み合わせを歓んでいるのを感じるよ」釣人は何時もになく少年に語り続けた。少年は釣人が何か新しい物を探し出した事を直感した。輝く主役の脇で使命を咲く花、そんな竿との出会いを予感した釣人の歓びは少年にはまだ少し難しい題材であった。「Scott Mackenzie」氏、釣人は今回の帰国中 に 1人の釣人を見つめて来た。遥か遠く雲上の人だが、久しぶりに感じる人を垣間見る事が出来た。釣人は誰も知られず主役助演の花を贈るべき人を発見したファンの心意気を味わっていた。



ジェット・ラグ

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ジェット・ラグ

Jet lag:ジェット機などの超高速遠距離乗物によリ生じる移動後の滞在地域間の時差ボケ。体内時計の再調節には到着日入浴後の翌朝迄の安眠や日光浴などが挙げられている。

倹約を兼ねてヘルシンキ経由でパリへ戻る。約9000kmのジェット飛行で日中気温 15度程度と暖かかった東京から真冬の凍りついた北欧へと着陸した。飛行機を乗り継いで 2時間少々でパリへ到着する予定であったが、極寒気象の悪化で出発は 3時間に及び延滞した。配られた Sorry チケットで、空港内スタンドの大きなガラス越しに見える寒そうな北欧の夜を眺めながら海産サンドイッチを摘みにビールで一杯させて頂いた。久しぶりに戻ったパリも随分大陸の冬が進み、日中最高温度が 5度位と肌を刺す寒さで、ジェット飛行で疲労して膨らんだ心臓が少々痛んだ。ジェット・ラグによる時差ボケはどうも苦手で回復には人より数倍の時間が掛かる。多分、飛行中の機内ジェット高周波音との相性が苦手と思われ、飛行機での移動後に疲れが残る方だ。帰国のお墓参りを母と済ませた後、多少余った時間を東京の学生時代の思い出の場所で過ごせた。新宿東口紀伊国屋で本を買い、すぐ裏手にある TOPS HOUSE ビルの「New Tops」でコーヒーを一服する。三十数年前の時間が蘇った。時を越えて同じ空間がそのまま残っていてくれる事は何よりも嬉しい。『うつせみの 代々木の里は しづかにて 都のほかの ここちこそすれ / 明治天皇御製 』渡り鳥が飛来していた明治神宮の池は残念ながら渇水状態だった。しなやかな都会ぶりを発散する青山、銀座は相変わらず日本特有の高級感を醸し出している。学生時代に随分とまぶしかった街並を歩きなおして見た。今の空気を体の中に吸い込んで来た。懐かしい思い出を整理しながら戻ったパリで相変わらず苦手なジェット・ラグと格闘している。久しぶりに愛車「玄太郎」と走りに出た。長い間留守番をさせてしまったが、心地良い快調なエンジン音で応えてくれた。感性の柔軟体操を終えて関節にも油を注し直す。ウォーミングアップが終了すると又パリの生活が始まる。



留守番

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留守番

少年へ伝言
11月 10日(月曜)パリ発 〜 11月 25日(火曜)パリ着の日程で日本へ行って参ります。
高番手の長竿(Dハンド)のキャスティング練習を続けていて下さい。新しい用具と技術を
勉強して来ます。返り次第に連絡します。  釣人拝

パリの黄葉

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パリの黄葉

パリ中央で左岸 7区と右岸 1区を繋ぐ Royal橋(Pont Royal)からの西側(川下)風景。
「黄葉」は葉緑体が分解されて緑色が消える落葉前のステージで秋を演出する。

コートの襟を立て歩く肌寒い季節が始まった。茂っていた街の樹々も葉を落としながら冬の風景が始まろうとしている。気候の変化で赤、黄、褐色に変化しながらやがて散って行く木の葉の美しい色が寒風の中を急ぎ足で歩く人々を一瞬立ち止まらせる。冬晴れの青空に光を浴びて金色に輝く黄色も綺麗だが、灰色の空から零れる陽光の下、コントラストをのせる樹々は一段と美しい。「どうだい、青空の黄色もいいが暗い灰色の空から光が零れる時の黄葉もいいだろう」釣人は久しぶりに散歩を共にした少年に話しかけた。「パリは暫く最高温度が 5度位迄下がる寒い秋日が続き、やっと 15度位迄上がり通常に戻ったのが最近だよ」、「留守中の練習で長いテーパーを持つトライアングルラインを自作して試して見たよ」何時の間にかマフラーをしている少年が珍しく沢山話した。そして最後に、「空が暗く、黄葉が光を浴びると風景に奥行きが出てくるね」と釣人へ話した。釣人は久しぶりに成長期の少年の肩を叩いて目を丸くした。街中を気軽に散歩出来るパリに感謝した。

フランスの民宿

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フランスの民宿

パリよりフランス中央部へ南下、ほぼ中心に位置する「Montlucon」近郊北部にある民宿。
地方各所の田舎に気の利いた民宿が増えている。ホテルでは味わえない寛ぎを過ごせる。

季節外れでもまだ泳げるシチリアの海に漬かり、パリに戻るとさすがに寒さが肌に堪えた。日本へ一時帰国の日程が近づいているのでトンボ返りでフランス中央部にあるシルクライン(毛鉤釣りに使用する絹製のトラディッショナルな伝統ライン)のアトリエに新ラインの打ち合わせに出向いた。Meeting 後の時間を考えると一宿泊が必要とされる時間になるので、急ぎ近場の民宿を手配する。最近は気の利いた民宿が増えているので、仕事での移動にもささやかな寛ぎが味わえる。農家の納屋や牛舎などを改築改装して味のある民宿が造られている。農家がその土地で実際に長く使って来た素材に手仕事で味のあるモチーフが追加されて行く。近代的なデザインでは味わう事が出来ない独特なテイストが現われる。歴史を越えて来た本物の現場の素材だけに、プロの大道具師が舞台の為に丹精込めて創ったものよりも迫力があったりして勉強になる。釣人はそんな改築途中の新鮮な過程を眺めさせて貰うのが好きだった。工事途中の説明を聞きながら、その人の遠大な計画や夢を、惚れ惚れと眺め直してしまう様な工事現場の雰囲気がたまらなく好きだ。人は何をエネルギーに遠大な計画へと向かって行くのだろうか?宿泊と一緒に気持ち良い現場の夢を味合わせて貰った。



シチリア島 海の月光

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シチリア島 海の月光

Sicilia島 海の満月。太陽燦々の島で久しぶりに海で満月を眺めた。島の夜の海は波音だけの静寂で空と一体になり、月が照らす海面には島の渡り道を感じさせる様な輝きが見えた。

明日パリへ戻る最終日の夜、シチリア島の海で相棒と満月を眺めた。波音だけが聞こえる真っ黒な海に月光が美しい。シアトルでの釣り橋からの海の夜釣りを思い出した。静かな海でも「current」(海面に湧き上がる潮流)が岸辺に近ずくと流れと共に海洋を移動する大きな回游魚が陸地近海を掠めて通る。釣人はそんな一瞬に賭けて陸地から海を旅する回游魚を狙う釣りが好きだった。相棒とパリで一緒になった頃、シアトルへ渡り、当時の釣り橋で一晩だけ二人で徹夜の釣りをした事があった。相棒はその夜に海のキングを掛けたのだった。そんなに古い記憶ではないと思っていたが、数え直して見ると 19年の月日が過ぎていた。この年になっても、海に面して正対していると、「この海の向こうに何があるのだろう?」と不思議な気持ちになって来る。何時の日か、島を出てやがて又戻ってくる日があるのだろう。The man who came from Sicila や The woman who came from Sicila は異国の地でやはり月を眺めて島の事を思う時があるだろうか?自分達も「日本」という島から海外へ渡って来たのだから ...。海と輝く月を見ていると未知の世界を感じ、飛び立ちの時を体の中に感じ始めた。

シチリア島 街の教会

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シチリア島 街の教会

Sicilia島 北岸西部「Palermo」の街の教会。イタリアの教会内部は実に美しく、街の住民がクラシックな服装で訪れる「ミサ」時には、地域色の濃い礼拝や感謝、交わりが感じられる。

観光客が列をなす名所旧跡は苦手で、散策時に街中で見つけた静かな教会の扉を押した。扉の中は都会の喧騒が遮断され、実に美しい荘厳な祈りの場所が拡がっていた。イタリアを旅すると小さな村や島の片隅にあるひっそりとした教会でも扉を押すと荘厳な内部装飾に驚かされる事がよくある。今回の教会は内部が明るく、天井の美しい装飾がカラフルで、何よりも鉢植えの植木のグリーンが印象に残った。フランスで見慣れた教会はステンドグラスを透過する薄明かりがイメージにあるので、植木を育む十分な光射すこの教会は明るく感じた。回教寺院では小さな噴水を取り囲む植木や回廊の間が印象に残るので、これもこの島特有のシチリア・アラブ様式の一片か?と思われたが説得するには若干知識不足だ。兎に角、この教会の祈り場では植木が街人と同席して緑の葉を育んでいた。島内他所で見た教会は、丁度日本の田舎で見る石のお地蔵さんの様な素朴な石彫装飾が施されていたり(これはシチリア・ノルマン様式だろう)、パレルモ近郊では非常に美しいモザイク装飾が内装に施された教会など、明らかに様々な文化の影響を融合しながら独自のスタイルを築いてきたシチリア島の歴史を感じさせられた。確認を強いられるガイドブックを宿に置き、情報から開放されて自由に訳もなく街を歩いて見ると様々な活きた発見や情景が目に飛び込んで来るものだ。


シチリア島 海の幸

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シチリア島 海の幸

Sicilia島 北岸西部「Palermo」。南イタリアでナポリに次ぐ大都市として人口 90万人を抱えるシチリア島の州都。長い歴史で数々の海外勢力の支配を受けて独自の融合文化を育む。

シチリア島には州都パレルモとカターニアに空港があり、空の玄関口はパレルモがメインとなる。パリに帰る日が近づいたので、東岸南部のシラクーサからパレルモ近郊の民宿へ移動した。シチリア島には先住民族ミケロス人とエレミア人が住んでいたが、昔は「地中海の十字路」と呼ばれる要衝に位置するがゆえに、フェニキア、ギリシャ、ローマ、ビザンチン、イスラム、ノルマン、フランス、スペインと幾多の民族によって興亡が繰り返された。長い歴史を経て各文化が融合し合って、やがてシチリア・ノルマン様式やシチリア・アラブ様式と言われるシチリア島独自の文化が築かれたそうだ。州都のパレルモはそんな特徴が最も著しく現われた大都会だ。島人口 510万人の内、 90万人がこのパレルモに集中する。旅行ガイドブックでも最も多くのページ数を割いて名所旧跡が紹介されている都市だ。他のイタリアでは見られぬ様式の異なる文化遺産が残る為、一年中多くの観光客を惹き付けている。海外旅行者ばかりが目に付いてしまう名所見学を避けて、釣人と相棒は島の人達の生活が息ずく「街の市場」を歩き回って見た。「文化融合」と呼ばれる街の活気を実感した。パリで「アラブ屋さん」と呼ばれる週末も開く雑貨屋と類似した店構えの中で、見るからにイタリア人と思われる島の人が働いている。食材に関しても南イタリア、地中海、アラブ、アフリカの幸が山盛りだ。釣人は魚屋に盛られた活きのイイ「海の幸」に目を丸くして、相棒は早速、シチリア島特産乾燥トマトの大袋を二つぶら下げていた。シチリアの漁師、男衆が捕る「海の幸」は格別に美味そうだ。釣人は出会えたマグロ釣りの頭領の太い声と大きな体格を思い出した。

シチリア島 夏の余韻

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シチリア島 夏の余韻

Sicilia島 東岸南部「Siracusa」近郊の民宿女主人が教えてくれたマグロ釣りの小さな漁村。 漁師の匂いが残る広場に村跡を改装した小さなカフェが夏の終わりを静かに営んでいた。

民宿の女主人が教えてくれた「本に載らない漁村」。彼女の説明の中で「とても小さな村跡」と「マグロ釣りの漁村」の二語が釣人の耳に焼きついた。早速地図を広げて道順を尋ねる。女主人は「漁」ではなく「釣り」と言う言葉を使った。そして、「小さな村だが雰囲気がある」と目を少し細めて繰り返したのだ。釣人と相棒は「その村と出会い」を直感した。地図を見ても行き着けず、到着してさえその所在が解らない程に小さな海辺の村だった。集落跡に広場があり、遂に、この村でマグロ釣りを引退した「頭領」と出会う事が出来た。漁船の倉庫跡を思わせる大きな建物の中でマグロの加工製品を扱っている。建物に入ると釣人の直感でこの人が「頭領」である事がすぐ認識出来た。この村で生まれ、若い時分からマグロ漁師を仕切って来た男である事が引退してなお風貌の隅々滲み出ている。釣人は彼が若い衆を率いて海にいる夏の日を思った。頭領は倉庫で働く若者に命じてマグロのカラスミと乾燥肉にレモン汁とオリーブ油がたっぷりかかった美味しいつまみをご馳走してくれた。生前の勝 新太郎さんに良く似た、声と体格に凄みのある器の大きな頭領だった。広場にある小さなカフェで聞き出した話によると、海に面した感触のある漁師納屋跡が宿泊に貸し出されているとの事だ。また何時の日か、この村を訪れて是非とも海に面した漁師の家に泊まろうと相棒と話し合った。夏の余韻が恋しくなる旅行者が去った頃がいいだろう。



シチリア島 「Siracusa」近郊の民宿

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シチリア島 「Siracusa」近郊の民宿

Sicilia島 東岸南部「Siracusa」近郊の民宿。出来る限りその土地の人情と触れ合いたくて、民宿を探し出してはお世話になる。家庭的な朝食時に耳寄りの情報を詳しく教えて貰える。

父親が耕した土地を引き継ぎ、当時の納屋を改築して民宿に改装したそうだ。逞しい大きな掌で庭を指差しながら女主人が説明してくれた。民宿を渡り歩く旅はその土地にしっかりと根を張った地方色の濃い貴重な話が伺える。釣行時に人情あるもて成しを受けて以来、すっかり民宿のファンになり、朝食の時間が楽しみになっている。場合によっては夕食を世話してくれる所もあり、旅中何よりのくつろげる時間をお土産に頂ける。但し、宿への移動には車が、近くからのアプローチには携帯電話が欠かせない。十分に近づいているのだが、まさかこの奥道に民宿があったのか!と言った山奥の民宿が多いからだ。近くの目ぼしい位置から電話を掛けて、迎えに来て貰い、やっと辿り着けたスリリングな経験も積んでいる。そんな時程、「良くやって来た!」「辿り着けて良かった!」と言葉では説明出来ぬ情と情が通じ合うものだ。この民宿の女主人が近くの山中にある「バロックの村」と海辺の「マグロ釣りの小さな村」を教えてくれた。ガイドブックでは発見出来ぬ貴重な情報だった。「シチリアは地中海に浮かぶ大きな船、その船に沢山の国の人が乗り込んで来た。この島にはお金持ちと貧民だけが住んでいるのよ」彼女が話してくれた言葉が、釣人と相棒の心の中を響いていた。


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