水辺

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水辺

水辺に郷愁を感じる時があるだろうか?水から陸へ這い上がって生活を開始した陸棲動物も時たま水辺にふらりとやって来る時がある。DNA にはまだ微かな記憶が残っている筈だ。

掌を開いて見た。指間に残る皮膜は本当に水掻きの跡なのだろうか?繰り返す波の音を聞くと心が落ち着くのは釣人だけだろうか?涙の味に海水を思い浮かべる。現在の陸棲動物の先祖は皆、海や河口部の水域から陸へと徐々に這い上がって来たのだろう。時たま水辺にやって来て掌を水に浸し、慌ててハンカチで水を拭く。水の記憶は長い年月を経て薄まり、すっかりと陸の住人に成りきったからだろう。子供達がセーヌの水辺で遊んでいた。子猫が水に濡れた足を慌てて引っ込める様に、落ちない様に気を付けながら、それでも水辺へと近ずいて行く様子が面白かった。「彼等は竿は握っていないが、ひょっとすると僕達も彼等と同じ事をやっているのかも知れないね」釣人は笑いながら少年に言った。「水辺の植物も陸地へと上がろうとしているのかな?足が滑る水苔は丁度中間かも知れないね」少年も進化の過程を思い浮かべた。おっかなびっくりだからこそ水辺は面白い所なのだろうと思った。


ちびっ子達の秋

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ちびっ子達の秋

学校の先生に連れられ社会見学中のパリのちびっ子達。装備の様子から体育の授業中かも知れないが、パリの学校では機会ある毎にクラスで街中へ出掛ける課外授業が多い。

日本の学校と比べて各学校が小分けになり、校舎や校庭が小さいと言う事情もあるが、パリの学校は社会勉強を兼ねてクラス皆で連れ立つ課外授業が多い。クラス仲間と共に未知の社会へ出向く事で子供達は社会のルールや仕組みを仲間同志で体験して共有するのだ。引率の先生はご苦労だろうが、大人達が造り上げている社会の実像をそのままダイレクトに見せて行く姿勢には共感する。やがて子供達はりっぱなパリジャンへと成長して、口を尖らせて国際情勢を批判する学生達へと育って行く。子供達を見ていると、お互いの距離感が実にストレートでフレッシュそのものだ。安全で心地良く、住み良い社会を求めながら、いつの間にか互いの安全確保の為に一定の距離を保つ習慣を身に着けているのが大人社会の現状だ。子供達は課外授業で様々な社会の実像をクラス仲間と共に眺めて、彼等の未来社会を作って行く事になる。「引率の先生、ご苦労さん!」釣人は先生に手を振って挨拶をした。

一束のブーケ(花束)

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一束のブーケ(花束)

パリ 4区:サン=ルイ島の St.Louis en L'ile 教会前から結婚式を終えたばかりのカップルが新しい人生へと出発した。小粋なパリらしい演出に道を行く皆から祝福の言葉が贈られた。

質素だが工夫凝らした新婚カップルの微笑ましい出発ぶりを皆が手をたたき歓声で見送る。シャガールの言葉、「人生は一束のブーケ(花束)だ」が極当たり前の事に思える若者同士の爽やかな出発風景だった。その時々を過ごした時間や情熱は摘み取られた1本 1本の花の様に思い出に残り、やがて振り返って見ると一束のブーケ(花束)として束ねられている。花びらの落ちたドライフラワーや茎の折れた花が混ざっていても一束の花束は美しいひとつひとつの思い出の集まりだ。昨日、以前にお世話になった女性から 40才を迎えてはじめてご主人との子供を授かったとの吉報がメールで届いた。今日はパリを訪れたアラスカ帰りの友人から釣りの話を聞かせて貰えた。1本 1本の美しい花が友から届けられている事に感謝している。釣人はこの二人の出発を見送りながら美しい野生遡上魚との出会いを思った。


木肌のぬくもり

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木肌のぬくもり

枯葉が散り始めた街をセーヌ沿いに歩いていると、停泊する船の甲板に夏の日の名残あるテーブルと椅子が並んでいた。木肌のぬくもりが心に残り、もうすぐ降りる初霜を連想した。

石畳の街に枯葉が舞い始めるとコートの襟を立て、マフラーが欲しくなる。遂先日迄の夏の陽射しが思い出されてぬくもりが恋しくなる。セーヌに浮かぶ船の甲板は雨風に晒されながら未だ微かに夏の日の時間を残している。既に気温はかなり低くなった水辺にありながら、木肌のぬくもりが心を暖めてくれて寒さを感じさせない。「風が冷たくても太陽さえ出てくれれば、あんなテーブルで暖かいカフェオレでも飲みたいなあ」釣人が背伸びをして少年に言った。「風を止めてくれる分厚いダッフルコートを着込んでテーブルを囲めばカッコいいよ」少年は映画のシーンを想像していた。もうすぐ初霜が降りて甲板のチーク材を白く覆う日がやって来る。滑りやすくなった甲板に足跡を付けながら皆で遊べれば楽しい事だろう。枯葉を散らす秋風が吹き始める頃、「木肌のぬくもり」が少年と釣人を想像の世界へと招待してくれた。


パリの掃除人

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パリの掃除人

森では落葉が積もり重なり、冬の地温を守り必要な養分や水分を保つ大切な腐葉土となる。観光客の多いパリ街中では風情のある枯葉も掃除係りの人にせっせと片付けられる。

落葉掃除、これは仕事と割り切って辛抱強くやらねば続けられない仕事だ。木々は深緑の余韻を含んだ強い夏葉を残しながら、枯れた葉だけが少しずつ冬場にかけて毎日舞い落ちて来る。掃除を終えたはずの後ろを振り返ると、既に次の枯葉が落ちている状態なので掃除係りの人のご苦労ぶりが察しられる。本格的な落葉が始まるとさすがに市の清掃局も送風機を使った落ち葉吹き飛ばし人などを動員させて本格的な対応を開始するが、まだ今の時期はひとりひとりの掃除係りの人の手仕事で落葉が拾われて掃除されている。「パリの人がひとりダンボール箱一杯ずつ落葉拾いをしたら片付くかなあ?」少年が街路樹を見上げていった。「これだけ沢山の葉っぱが街行く人達にひと夏を過ごさせてくれたんだ。これから街路樹は冬眠期に入って冬を耐えて行くんだよ」釣人が木々の落葉のシステムを少年に教えた。袋に集められた落葉を見ながら釣人は少年時代を過ごした植物園の林を思い出した。長靴を履いて落葉を蹴りながら林の中を散歩すると楽しい時間が過ごせる季節がやって来た。


秋の朝靄

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秋の朝靄

パリ 4区:サン=ルイ島と右岸を繋ぐルイ=フィリップ橋(Pont Louis Philippe)。朝靄に斜光が射し初秋のセーヌが微かに輝く。パリは時々物静かな女性の一面をキラリと見せてくれる。

落葉の季節を迎えると子供の頃に見た「落葉焚き」を思い出す。お寺の境内などでは熊手や竹箒で集めた木の葉が湿った煙を上げていたものだ。朝靄がかかるセーヌを渡っているとふとそんな事を思い出した。淡くなった冬場の太陽が朝靄の隙間から穏やかなセーヌを静かに輝かせていた。「スモーキーピンク」、朝方に見る焚火の煙の色、太陽光に染められた朝靄、紫を微かに帯びた薄ピンク色は物静かな女性の魅力を含んでいる。セーヌ川が遥か遠くで輝くと何年住んでいても立ち止まって暫し見つめてしまう。何を学び取ったら自分が巻き上げる毛鉤にもこんな魅力を備える事が出来るのだろうか?そんな毛鉤に食い付いてくれる魚はいるのだろうか?右岸からシテ島へ渡る僅かな時間であったが朝方の景色が一日の始まりを楽しませてくれた。今日は隠れ家「Dragon」を何処まで進める事が出来るだろうか?釣人はもうすぐ暖炉へ薪をくべる季節が訪れる事を秋を迎えた早朝の空気から教えられた。



シルエット

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シルエット

朝晩の冷え込みが増して久しぶりにヒーターを入れた。(最低 7度、最高 18度。湿度 87%)
昨日は高緯度の冬場独特の空模様で、街並みのシルエットが一足早い冬場を感じさせた。

夕暮れの太陽が何時もより低く淡く感じられた。高緯度の秋は気温の低下と共に一挙に深まって来る。池の水は過ぎ去ったばかりの夏の温かさをまだ保っているので早朝に朝靄が見られるだろう。こう言う天気の日は水の中の方が暖かく、管理釣り場の虹鱒は元気に秋の捕食に励んで泳ぎ回っている事だろう。釣人は淡い斜光に街並みのシルエットが暗く大きく感じられて我家への道を急いだ。街影を見ると子供の頃に見たプラネタリウムの開演時を思い出す。場内がだんだんと暗くなり、街並みのシルエットが濃くなるとプラネタリウムの星が少しずつ見え始めるのだった。日本の街影との違いは教会の尖塔や風見鶏だろうか?懐かしい電信柱や電線のある風景はパリでは見られない。釣人はプラネタリウムを初めて見た子供の頃を思い出しながらジッパーを首の上迄上げた。今日は寒いから「家路へ急ごう!」。「家に帰ったらうがいをして生姜湯を飲むんだよ」釣人は珍しく少年を家前まで見送った。



練習場所を探す

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練習場所を探す

少年にはカッコ良い釣人になる為の目標があった。釣人には自分の釣りを探求する上で
習得すべき技術が残っていた。二人は練習に適した場所を徒歩 30分以内で探し始めた。

「これが練習竿だよ。この冬場に十分に振り込んで練習しよう」釣人は少年が初めて見る
長くて重いダブルハンドの竿を渡した。少年用練習竿 17feet(D)、釣人用練習竿 18feet(D)、二人にとっては極限のヘビータックルだった。現在市販されているダブルハンド竿は想像以上に軽く扱いやすくなっている。新素材や技術開発によって補強された努力の成果だ。キャスティングの技術も運動力学的に分析されて解説される様になった。扱い難かった重い竿は軽量化されて一般向けとなり、魔法の様なキャステイングも少しの練習を積めば誰でも釣りが成立出来る迄に至っている。それなりの金額を道具に投入すると種類や調子が違った数多くの市場の竿が目的を適えてくれる時代だ。釣人は思案の末、従来より長く使われて来たクラシックタイプの長く重い竿を練習竿に選んだ。「新しい道具に頼る技術は所詮、今でしか通用しない範囲を模索する事になる。やがてもっと新しい波が全てを押し流して変えて行くだろう。長く重い竿はそれを振りこなす事で、最終的に一番大切な体重の乗せ方を自ずと学び取れる利点がある」独学の釣人が辿り着いた現在の結論だった。「道具は変わっても魚は昔と変わっていない。今迄の釣人が振りこなして来た竿を同じ様に扱える様になって見たい」少年は釣人に頷いた。「効率良く楽に魚を多く釣りたいと言う夢は持ち合わせていないんだ。この練習竿を振りこなせたら、実釣竿はさぞかし快適に振れる様になっているだろう」釣人は少年にウィンクした。人が少なくキャスティング練習が可能な水辺を二人は見つけ出した。



秋の釣人

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秋の釣人

サン=ルイ島セーヌ河岸の釣人達。風が冷たくても陽射しが出るとセーヌ川に釣人が竿を出す。餌釣りは毛鉤と一味違う釣りの妙味や静けさがあり、見ているだけでひと時を楽しめる。

鱒釣りは冬場に禁漁期間を迎えるが餌釣りは一般的に四季を通して川はいつでも開かれている。かなり寒くなっても暖かい陽射しが出るとセーヌ川に釣人が竿を出しにやって来る。街中を歩いていても釣人が静かに竿を出している風景を眺めれる環境はパリとセーヌ川に感謝している。小魚を釣っていようが、大物をねらっていようが、餌釣りには独特な「待ちの時間」が感じられて釣人の眼差しを眺めているだけでひと時を楽しませて貰える。釣りを続けていると近寄って来るだけで相手の釣り方や技量が解って来る様になる。邪魔さえせずに静かにしていればややこしい釣人でも傍に置いてくれて心を開いてくれるものだ。「右利きの釣人には左側から、左利きの人には右側から近ずくんだよ。懐に入る位の距離では低い姿勢が無難だろう」釣人が少年に基本のマナーを伝授した。「大切な事は、今その釣人は一番楽しい時間を過ごしている最中だと言う事を忘れない事だったよね」少年は釣人のいつもの言葉を暗記した様に繰り返した。釣人は笑いながら頭を掻いて階段を静かに川辺へと降りて行った。


落葉のイメージ

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落葉のイメージ

九月も半ばを過ぎて気温が急に下がって来た。散歩時の服装もチョッキより風通さない上着が必要となっている。落葉の季節を感じさせられる秋の文化ポスターが街で目だっていた。

活動的だった夏が終わり、深緑に茂った木々の葉が少しずつ枯れ始めた。落葉が始まり、最後まで木に葉を残す種類は紅葉へと移って行く。秋には各種文化祭や Exposition が催されるのは全国共通(多分北半球のみと思われるが)だ。街中ではこれから冬にかけて数多くの展示会が始まる。鱒釣りの分野はいよいよ 9月半ばから禁漁期を迎え、来年の春迄川が閉められる。これから冬にかけての毛鉤釣りは管理釣り場(魚を人為的に飼育放流して管理した釣り場)のみが残される。管理釣り場は料金を支払う事で一年中毎日の釣りが可能であり合法的に許されている。冬場に痺れを切らした釣人や毎日でも釣りたい人がお世話になるのがこの「釣り場」だ。釣人も毛鉤釣りを始めた当時は竿を持ってよく通った。そして、川の閉まったこの季節に「落葉のイメージ」を体感する事になる。川底の砂の色や水の色を意識して巻いた毛鉤が、落葉が堆積して池底を変えた止水を泳ぐ事になるのだ。「池の底は毎日落ちて来る葉でどんな色に変わって来るのだろう?そこで効果がある毛鉤は同系色?或いは反対色?一体どんな色なんだろう?」釣人はヒントを明かさずに少年に問うた。「同系色はゆっくりと微かに動かす。反対色は悠然と目立たせて泳がせる。黒は何時でも大丈夫さ」少年は想像して答えた。「面白い処だ。冬場の虹鱒から教えて貰おう!」釣人は少年の釣りキチぶりが嬉しかった。この冬は始めた頃を思い出して又、グラベル池で釣って見ようと思った。

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