晴耕雨読

JUGEMテーマ:日記・一般


晴耕雨読

『晴耕雨読』:田園で、のんびりと悠悠自適の生活をする。晴れた日に田畑を耕し、雨の日は読書する意の解り易い言葉だが、釣人の街の生活の目標であり、夏の終わりの白昼夢だ。

特別に大きな夢ではないのかも知れないのだが、少年から「夢は何か?」と聞かれた時に自然と浮かんで来たのがこの言葉だ。以前にお世話になった S氏の名刺の右肩に小文字で書かれていた四字熟語だった。その後、この言葉は釣人の心の中で成長を続けて、今では大切な支えとなる言葉に育っていた。ここ数年、夏休期間は遠出を避けてパリで過ごしている。バカンス期は地方は混み合うが、人と車が去ったパリに残っていると、忙しい普段では感じ取る事が難しい「静けさ」を味わえる。そんな経験から、夏場は何時の間にか夏仕事と散歩で過ごす様になっていた。気忙しい普段では時間が取れなかった探求事や、日常雑多の仕事で特に遅れが気になっている宿題事項を「夏仕事」と一括して、この時期に取り組む様に心掛けている。バランス良い時間配分が日常生活の中で程よく達成出来ると心地良いものだろう。釣人は夏の終わりに、隠れ家「Dragon」で音楽を聴いて贐(はなむけ)とした。
一瞬の夏が、『晴耕雨読』の余韻を残しながら、陽射しと共に過ぎ去って行こうとしていた。










栗の実色

JUGEMテーマ:日記・一般


栗の実色

高緯度のパリに秋が訪れようとしている。夏休みが終わると、六月の夏至で夏を迎えた街も九月の秋分へと様子を変えて行く。栗の実色のテーブルに季節を迎える先準備を感じた。

残暑の盛り返しはなく、散歩時にチョッキを一枚着込んで歩く季節に入って来た。一足早い秋を感じさせる栗の実色のカフェのテーブルが新鮮で、暫く忘れていた秋色が懐かしく甦り、散歩時の釣人の目を惹いた。現在夏時間で日出 7:05、日没 20:36と日照時間も肌に感じて変わって来ている。深緑色に茂っていた樹葉は枯れ始め、軽さを増し、少しずつ散り始める。緑葉で覆われていた街が、樹枝の隙間から再び石肌色を覗かせて来る。高緯度に住む人々は夏が終わり秋に入ると、冬を迎える準備に取り掛かる。鮮やかな夏の果実はジャムとなって冬場へと保存され、バカンス地で日焼けした肌は弱まる日照でも風邪を弾き返してくれるだろう。季節の移り変わりを取り込む早目の準備や色彩が、パリの街中で新鮮に目に映り、秋色トーンへと移行している事に気付かされる。「暖かいチョコレートを一杯おごるよ」釣人が少年を栗の実色のテーブルに誘った。二人も秋を迎える準備に取り掛かる事にした。

夏の余韻

JUGEMテーマ:日記・一般


夏の余韻

右岸 3区マレ地区のボージュ広場(PLACE DES VOSGES)。パリ最古の広場で歴史建築と美しいアーケードに囲まれている。陽当りの傍にあるベンチで夏の余韻を惜しんでいる様だ。

強かった日差しに少しずつ秋の気配が訪れると、何時の間にか空が高く感じられる様になって来る。夏場は公園広場の木陰奥で休んでいた人々も、幾分明るいベンチに座り場所を移して来た様に感じられる。パリの公園広場には休憩する人々の為に沢山のベンチが用意されているので、誰でも気軽に休む時間が持てる。大きく綺麗な公園が多数有る中、マレ地区にあるボージュ広場は手頃な大きさで取り分け周囲の歴史建築や煉瓦色の美しいアーケードでパリ唯一の人気を誇る公園広場だ。「この広場の美しさを鑑賞する特等席は、広場南東の角にあるビクトル・ユーゴ記念館の広間からだよ。入館して窓から広場を斜めに見下ろすと、パリジャンの評価が納得出来るよ」釣人が少年に特等席を紹介した。「学校の授業中に先生に連れられて皆で入館した事があるよ。中国風のサロンは覚えているけど、残念ながら広場は見なかった」少年は次回の入館を楽しみにした。木漏れ日の影が淡くなり、陽当りの傍のベンチで夏の余韻を惜しむ人が増えて来ると、パリの公園は初秋風景に変わって来る。

街を歩く

JUGEMテーマ:日記・一般


街を歩く

夏休み最終週をパリの街を歩るく旅に選んだ日本人親子二人連れにマレ地区で出会った。
娘の掌とガイドブックをしっかりと握り締めて歩く父娘の姿に一瞬の郷愁を感じさせられた。

パリは観光客の多い街なので散歩中にも多くの旅行者とすれ違う。夏休みも最終の一週が訪れると夏人で賑わったパリ・プラージも既に片付けられ、秋の始まりを静かに迎える時期が訪れる。たまたまそんな時期に、少し遅れた今夏最後のラストスパートを掛けている日本のお父さん。父親の手を握って歩いたパリに娘は何を見て、どんな想い出を残して行くのだろうか?釣人は娘の手を引く父親に共感の念を抱いて二人の後姿を見送った。『街へ出よ。街は開かれた書物だ』と言う言葉があったが、パリの街は少なくとも釣人と少年には教材とアイデアの宝庫であった。既成のガイドブックに書かれていない小路にこそ、今新しく生まれ出づる物が産声を上げているものなのだ。「久しぶりに右岸の河岸沿いを歩いて見よう」釣人が少年の肩に腕を掛けて言った。釣人は歩いて暮らす小さな街、パリがまた好きになった。


パリの煙突


パリの煙突

パリの建物は屋根裏部屋の階を含めて六階(日本風の七階)で大まかに統一されている。粗同じ高さの屋根に昔からの丸い煙突が植木鉢の様に、一暖炉に一つの数で並んでいる。

現在パリの暖炉は木材のみを燃やす条件で使用が許可されている。以前は暖房効率の良い石炭も燃やされたが、これは環境浄化の目的で禁止となった。高緯度に位置する為、未だに夏場の冷房機は一般的には普及していないが、冬場の石造建築を暖かく保つ暖房は昔から暖炉が発達していた。もちろん現在は一般的な暖房を電気や石油ボイラー(集中暖房)に頼っており、都会での暖炉は雰囲気を求める高級な暖房方法と相成っている。パリの道を歩きながら、ふと建物の屋根を見上げると昔の暖炉数と同数の煙突が屋根の上に残っている。植木鉢を逆様にした様な形で、トスカーナ地方の瓦色を思い出され、ラテン民族の小さなしっぽの様な感じだ。「モンマルトルの丘から眺めるとパリ中の屋根に暖炉の煙突が立っていたのが印象的だったよ」少年が道からは余り目立たない暖炉の煙突を眺めて言った。「もう少し寒くなると、昔ながらの暖炉の炎が好きな人が薪を燃やすだろう。パリの屋根の煙突から煙が出始めるのももうすぐだ」暖炉好きの釣人が薪調達を思案しながら言った。


掘出し物

JUGEMテーマ:日記・一般


掘出し物

珍しい物はないだろうか?思いがけなくポケットマネーで手に入らないだろうか?気になる
山積みに出くわすと、雑に積まれている程、埃にまみれている程、期待感が膨らんで来る。

タバコを止めて既に十数年が経ち、パイプに関しては遥か学生時代以降は吸った事がない。にも拘らず、釣人の不可思議な行動パターンのひとつに「パイプ屋前での立止り」があった。吸いもしないパイプに目を通し、しばしば店の奥の方を覗き込んでは時々店の扉を押して何やら聞き込んでは帰って来るのであった。「何かパイプの事を調べているの?」少年は思い切って釣人に尋ねてみた。「愛煙家が手にするパイプの木肌感について勉強しているんだ。本業の竿仕事でリールシート(リールを取り付ける部分部品)にちょっと凝った木目を使いたいんでね...。時たま変わった原材が固まりである時があるんだよ」釣人が少年に説明した。釣人は材木屋以外でも狩猟用銃器屋や手作りナイフ屋、パイプ屋など、好みの木塊に有りつけそうな所は気を付けて目を通す様にしていたのだった。「パイプは趣味の人の掌に何時も握られている物だ。釣竿のリールシートも釣人に触れられる物だよ。趣味の道を探求する人が好む木肌感については知りたい事が沢山あるんだ」釣人は少年だけには何時も手の内を明かして説明した。「渦を巻いている様な木目、蛇の肌、鳥の目、オーストリッチ皮の様な物、色々な木塊があるんだね」少年は目の前にある珍しい木塊の種類の多さに驚いた。
業物と呼ばれる物には、珍しい貴重な素材や平凡に見えても特別な思い出が内包されている素材が使われている事が多い。「掘出し物」との巡り合いは、勉強や探求以外に、日頃の行いやフットワークを使った空き時間の努力が重要な糸口となる事が多い様に思われる。



ポケットのあるテーブルクロス

JUGEMテーマ:日記・一般


ポケットのあるテーブルクロス

シテ島西側の小洒落た広場(Pl.Dauphine)脇に在る可愛らしいレストランで、ポケットのあるテーブルクロスが使われていた。亡きイブ・モンタン氏もこの広場に面して住んでいたらしい。

パリでは気の利いたアイデアは大いに歓迎され、形あるデザインに採用される。この広場を歩いてレストランの横を通る度に、何故かいつも仄かな可愛らしさが漂っていた。釣人は遂にその可愛らしさの秘密を発見した。「今迄気が付かなかった。このレストランのテラスにある小さなテーブルクロスには全部ポケットが付いていたんだ!これは店主の心遣いだね」釣人はこの新発見を少年に話した。「テラスで食事する時に帽子やスカーフなどの小物が入れられて便利だね」少年もその実用性に感心した。そんな心遣いが形や色彩にも表れて暖かみのある可愛らしさが生まれている様に思われた。テラスの小さなテーブルに座った二人が、テーブルクロスのポケットに帽子やスカーフを無造作に突っ込んで、食時前の話に熱中して花咲かせている楽しそうな姿が想像出来る様だ。決して奇抜なアイデアではないが、店主のちょっとした心遣いがこのレストランを小粋なものにしている。広場片隅の小さなレストラン、通りすがりの人が口遊む明るいシャンソンが何処からか今すぐ聞こえてきそうな感じがした。


オール・ブラックス(ALL BLACKS)

JUGEMテーマ:日記・一般


オール・ブラックス(ALL BLACKS)

半艶の黒とニッケル・クロームに色褪せた黒皮シートが実にいい感じで充分に乗り熟されたカッコ良い大型バイクが停まっていた。持主と共に至福の風を切り、万里を走ったのだろう。

大切に扱われた物を見ると、その物の中に持主の気持ちが宿り、恰も生き物の様な存在感が伝わって来る。大型のバイクでありながら半艶の黒がボディーを引き締めて車体の大きさを余り感じさせない。節々で輝くニッケル・クロームがマシーンの安心感を際立たせている。色褪せた黒皮シートは着込んだ皮ジャンパーの様に車体との一体感を醸していた。少年は真っ先に発見すると駆け寄って、前後左右から惚れ惚れと眺めた。少年が近ずくとさすがに大型バイクは本来のどっしりとした大きさを感じさせるのだが、丸みを持つ曲面が少年の傍で大きな黒い昆虫の様に釣人には見えた。「お気に入りの黒い甲虫、カブト虫かクワガタ虫といった感じだよ。何となく頭部、胸部、腹部までがきっちりと整って別れて見えるよ」釣人が少年と大型バイクを一緒に眺めて言った。「主人を待つ秋田犬の様にじっと持主を待っているんだね」少年は停まっている大型バイクの頭をそっと撫でた。釣人はこの少年も何時の日か相棒を携え、風に向かって「青春の門」を全力で駆け抜けて行く日が来るのだろうと思った。


唐草模様

JUGEMテーマ:日記・一般


唐草模様

右岸 3区カルナヴァレ博物館(Musee Carnavalet)はマレ地区のヴォージュ広場の近くにあるパリの歴史紹介をする博物館だ。唐草模様を思わせる装飾で補強された古い箱があった。

開催中の北京オリンピックの聖火台、散歩の道すがらのノートルダム大聖堂正面扉、日本でもお馴染みの緑の風呂敷の柄など、唐草模様を思わせる図案は世界中様々な所で頻繁に目にする不思議な模様だ。正確には唐草文と呼ばれ、植物の蔓(つる)を模様として図案したものだ。アラビアのアラベスク模様が起源で、仏教装飾の織物などの柄として中国を経て日本へも齎されたらしい。西欧にはシルクロードを渡って変化しながら伝えられた物と思われる。植物の種類により忍冬(にんどう)、宝相華(ほうそうげ)、菊、牡丹(ぼたん)などの唐草があり、世界中の建築、家具、衣装などに微妙な変化を伴いながら図案模様として広く伝わり取り入れられている。「隠れ家(Dragon)の扉の内側に唐草模様を描き込んだ事があるんだけど、力及ばず、将来の宿題として取り止めた事があった。唐草模様は不思議な図柄だね」釣人が少年に白状した。「蚊取り線香も唐草模様なのかな?小さい頃のお弁当箱にも唐草模様が付いていたよ」少年も遥か遠方より日本へ伝えられた魔法の様な図案を眺めた。宗教や人種、国境を越えて東西へ拡がり伝えられた植物の図案に二人は興味を示していた。


夏の残り日

JUGEMテーマ:日記・一般


夏の残り日

長かった夏休みも残すところ十日余りとなった。夏風にも秋の気配が感じられる様になり、
日焼けした肌にTシャツが気持ち良い季節だ。今夏の成果や名残を木陰で静かに振り返る。

お盆が終わると日本の夏も峠を越して夏蝉の声も少なくなって来る頃だろう。子供の頃を思い出すと、余り進んでいない夏休みの宿題に小さな頭を悩ませて慌て始めている頃だ。今になっても、長い夏休み期間中に日頃の遅れを取り戻すべく休み返上で気合を入れた夏仕事の成果には相変わらず心細くなって来る。年を重ねたお蔭で持続性が多少向上して、少し時間の掛かる我慢仕事を継続して集中出来た事がこの夏の成長だった様に思えた。「隠れ家の再補強工事とアパートの内装工事で削埃と奮闘する夏休みだったけど、手を動かしていると本業の感覚や技術進歩の役に立つ。持続力が補強された夏休みだったよ」釣人が川を見ながら少年に言った。「1000ページ読破に挑戦して感想文を書き始めているよ ...。」少年は心もとない言葉で頭を掻いている。「夏休みが一段落したら秋のシーズン毛鉤を補充しよう」釣人が木陰で背中を伸ばして言った。二人は夏の残り日に少しずつ秋を感じ始めていた。


calendar
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< August 2008 >>
sponsored links
selected entries
categories
archives
recommend
links
profile
search this site.
others
mobile
qrcode
powered
無料ブログ作成サービス JUGEM