紅色(Rose Carmine JIS 3.0 R 4.0/13.5 ):紅花の汁で染めた紅染の鮮紅色。
紅(くれない,べに)の色は、茜の根などで染めた似せ物と区別して、「真紅」とも呼ぶ。
サーモン・フライ(鮭鉤)には数百種類にも及ぶ、クラッシックのパターンが存在する。
先達の鮭釣りへの情熱は、美しい魚を釣る哲学や毛鉤の芸術性を高い技術で競い合った。
古き良きクラッシク時代のパターンを調べて見ると、極稀に、「紅色ヘッド」が存在する。
パターン・リストでは鮭鉤の部分名称を十数の部位(HD:ヘッドなど)に別け、説明される。
HD(ヘッド)とは、針穴後部の位置で、羽などの材料を最後に縛る、毛鉤の「頭部」の事。
通常の鮭鉤では「黒色ヘッド」と指定されるのが、極稀に、「紅色ヘッド」が存在する。
数は稀少だが、どうしても「紅色」に指定するに至った理由を考えると、非常に興味深い。
通常は「黒色ヘッド」で事足りた。何故?歴史を越えて「紅色ヘッド」が残ったのか?
数少ない結果を逆から考察すると、重要なヒントが隠されている様で期待が膨らんでくる。
『赤系の色は、大魚に追われて必死に逃げる小魚のエラの色だ』と説明される事がある。
「だから水中で毛鉤の見えたり隠れたりする部分に、少し赤を使うんだね」少年が想像する。
「実際にそういった使い方を想像させるパターンも、数多くある」釣人が小さく頷いた。
「じゃあ、小さな紅色の頭部を、毛鉤にはっきりと創るのはどうしてだろう?」釣人が言った。
「エビ、イカ、カニ、吸血ヒル?理由は解らないが、釣れる鮭鉤として、歴史に残された」。
「赤い頭の雀がヒョコヒョコと、読書本の上を飛び跳ねたらどうだろう?」釣人が思案した。
解明出来ない謎の「紅色ヘッド」。少年と釣人は、途轍もない鮭鉤の奥深さと遭遇した。