少年の日記帳

JUGEMテーマ:日記・一般

少年の日記

少年がポケットを膨らませてやって来た。仕事机を片付けてお茶にしよう。
時折見せてくれる日記帳には、オレンジ色の「ラブレター」が挟まっている。

最近少年はポケットにいつも毛鉤箱を忍ばせてる。上出来を巻き上げた時は
息弾ませてやってくる。食い気が勝る時期だろうに、食を節約してでも材料の
収拾に我を忘れて動き廻っている様子だ。ペットショップの小鳥コーナーでも
落ち羽根が拾えるチェックポイントと聞くと、熱情ぶりが伝わる。背丈の割に
巻く毛鉤は大きい。「Big bait = Big fish」 に夢を託している様だ。いつの日か
金星をかけることだろう。プレゼントした白紙の日記帳には、裏面に小さな刻印
「RW/MADE IN ENGLAND」と押されてある。少年はまだ見ぬ恋心と奮闘中だ。

 

ネオクラシック

JUGEMテーマ:日記・一般

ネオクラッシク 

古(いにしえ)の挿絵の横に置いて見る。時代を超えて行け!「巻心・釣心・夢心」。
胸の昂ぶりは、流れを揺れ動く憧憬だろう。説明要らぬ愛情が毛鉤を巻き上げる。

「ブルターニュへ!」、春の毛鉤を準備中。巻き終えた「アローズ」毛鉤の復習から始めよう。流れを縦の隊列で遡上するアローズは、出来るだけ毛鉤を素早く沈め、下から斜め上方への上昇ターンで機敏に誘う。流れの筋に銀鱗の輝きを探し、縦の隊列へ「点の釣り」で誘う。海では底を食べていた魚なのだろう。下からの動きに敏感だ。みごとな魚体をギラリと縦に反転させ、押さえ込む様に食い込んで来る。70cmを越えると、海で育った逞しさで、鮭竿を存分に曲げ、その走りは海釣りのシルバー鮭を思わせる。腕前を鍛え上げてくれる群団だ。

さて、問題は、夢の「アトランティック・サーモン」だ。どうしたら毛鉤で出会えるのだろうか?釣人と少年の長年の目標だ。「同じ時期に同じ流れを遡上するアローズとの違い」、これが全ての鍵を握っている。まず、遡上数が極端に少なくなる。その上、中流・上流域において、魚が溜まる名所は、川を含む土地ごと魚漁権と共に、選ばれた人達によって買い占められている現状だ。銀行の頭取やら大企業の重役といった資産家連に気の良い友人を持たない限り、私有地内での竿入れはままならない。一般の釣人には、要ライセンスの公共釣場が割り当てられる。限られた公共の鮭釣場で、「ルアー釣り」や「餌釣り」、「毛鉤釣り」の釣人が凌ぎを削り、幸運の鮭を祈ることになる。それ以外は、最上流域の山間を探し、極小毛鉤を結ぶ宝くじの様な鮭釣りが残される。「だからこそ、釣れたら飛び上がり、全力で走り出してしまう様な釣りにしたい」。「同じ流れを、鮭は一度遡って行くのだ」。そして、そこに必ず、凄腕の鮭釣名人がいる。釣人と少年は夢を膨らます。釣った鮭数を探求するつもりはない。

釣人は毛鉤巻きのバイス(固定具)を前に、二杯目のコーヒーを飲み干した。流れを行く姿が余りにも美しく、海への旅を終えた大西洋鮭(アトランテック・サーモン)は、崇高ですらある。自分が巻き上げた毛鉤に、果たして野生の心を震わせてくれるだろうか?釣人は思案して、懐かしい Bob Dylanの「Forever young」(←左クリックでどうぞ)を聞いた。若き日は、決してしなやかとは言えなかったが、時の流れに揺れ動く感性は自由だった。語りかける彼の昔の声が、釣人を呼び起こそうとする。釣人は、「永遠の若さ」の中に、回帰して行った。微かに聞こえて来た毛鉤のイメージを、一気に巻き上げた。二本目も、同じパターンで繰り返した。巻き上がった二本の毛鉤をクラシック毛鉤の挿絵の横に置いて見た。「共鳴するハーモニーで息づいた。これでいい!数を巻こう」。「クラシックに負けない、揺れる毛鉤だネ」、少年は頬染めて歓んだ。釣人は鮭鉤「ネオ(Neo-classic )」と命名した。今春へ!夢託す毛鉤だ。


calendar
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< March 2024 >>
sponsored links
selected entries
categories
archives
recommend
links
profile
search this site.
others
mobile
qrcode
powered
無料ブログ作成サービス JUGEM